「台湾好き」にとって台湾批判はタブーなのか【台湾在住日本人による考察】

 「台湾について手放しでほめられると反論したくなる」

 これは、台湾人同僚がこっそり打ち明けてくれた言葉だ。

 新型コロナウイルス対策が奏功し、その成果によって日本でも高い称賛を受けた台湾。それは素晴らしいことだし、私も陳時中・中央感染症指揮センター指揮官のファンだ。

 だが一方でコロナ対策を巡り、台湾政府の在台外国人に対する軽視が浮き彫りになっている。以前取り上げた振興券問題(関連記事)に続き今度は、今までは国民と同様に入境できていた居留証所持者の入境に、コロナの陰性証明が要求されるようになるという信じられない措置がしれっと開始された。これは6月29日に行われた入境規制の調整によるものなのだが、受け入れ対象が拡大された一方で、今まで普通に入れた居留証所持者への入境措置は厳しくなった。改悪といっていいレベルだ。しかも、全ての居留証所持者が対象なのではなく、官員証や出稼ぎ労働者、学生の身分の居留証を持っている人は証明免除というのだから、ご都合主義にもほどがある。

<追記>上記の内容は執筆時(7月2日)のものです。居留証所持者は7月4日から陰性証明書が不要になりました。参考記事

参考 外交部調整外籍人士來臺規範常見問答集.pdf外交部

 この措置に関する批判はこのくらいにしておいて、私が一連の流れで気になったのは、少なくともツイッター界では、在台外国人に対するこれらのひどい扱いについて在台日本人から批判的な意見があまり見られないという点だ。

 みんなこんなひどい扱いを受けているのに怒らないの?というのが私の率直な思いである。

 在台日本人のツイッターを観察していると、基本的には台湾を称賛する内容が多いように思う。日本や中国などの政治をときおり批判しているアカウントでも、なぜか台湾政府のこの外国人差別措置についてはスルーだ。

 だから、「台湾批判ってタブーなの?」と思わずにはいられない。

日本人の間の政治的世論形成

 少し脇道にそれるが、現在の台湾好きには民進党支持者が多いように感じる。影響力がありそうな人のアカウントでも、蔡英文総統の再選に喜びを表明したり、この前の韓国瑜高雄市長のリコール成立時も「高雄光復」などとあからさまな反国民党意識を表す投稿などが見られた。

 私は正直、「民進党=正義」みたいな世論が、少なくともツイッター界隈の日本人に形成されつあるように感じ、それに危険性を抱いている。

 だって、いくら台湾に住んでいたって、中華民国に帰化してない人は外国人であり、参政権はないのだから。上記のような投稿をする人は、もしかしたら親族や友人などに民進党支持者が多くてそれらの思考に染められ、自分もその一員だと信じ込んでいるのかもしれないけど、外国人で参政権がない以上は一歩引いた目線が必要なんじゃないかと思う。

 例え身近な人が民進党支持者だからって、台湾人の中にも国民党支持者が一定数いるのは紛れもない事実だ。だから、選挙という名の多数決に勝った側にこびても、台湾に寄り添っていることには決してならない。

盲目になってはいないか

 話を主題に戻そう。私の推察だと、台湾政府批判が少ないのは、台湾好きの多くが民進党支持者で、現政権は民進党政権だから盲目になっているではないかと感じる。

 恋愛でもそうだが、相手の良い面だけを見てもその人を理解したことにはならない。台湾の良い面だけに注目して、悪い面を見ないようにしたり、スルーしたりするのは、真の台湾理解にはつながらない。

 私が「台湾日常」というタイトルでこのブログを立ち上げたのは、昨今日本のメディアなどでキラキラとした台湾ばかりが取り上げられる現状を前に、必ずしもキラキラしているとは限らない、もっと素に近い台湾の一面を知ってほしいという思いがあったからだ。

 冒頭の同僚の言葉を聞いて、私のこのブログの方向性は間違っていないのだと確信を持てた。

 もしかしたら台湾好きさんたちにとっては台湾批判はタブーだし、興味はないのかもしれないが、私はそれでも、自分が感じた思いをポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、率直につづっていきたい。

6 COMMENTS

おっさん

台湾政府が外国人に対して悪意を持って何かをしているとは思いませんが、確かに外国人の細かいニーズを吸い上げるパイプがもう少しあっても良いのではないかと思います。

日本工商会が毎年白書を出しており、台湾政府が提言の一つ一つに回答するという対応もしていますが、さすがに生活面まではカバーできないし、うちの様な零細業者はそもそも加入していません。

でもネットに陳情窓口が必ず用意されているので陳情することは可能ですよ。必ず期待した答えが返ってくるとは限りませんが、今まで一回も無視されたことはないので、こういう窓口を通して積極的に意見を述べていくのは良いのではないかと思います。

あと、ちょっと気になったのですが、居留証所持者の入境はコロナの陰性証明は不要だと思いますが、いかがでしょう?

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問題 12:持有效居留證的外籍人士登機前及抵臺時是否需檢附「登機前 3 個工作日內 COVID-19 核酸檢驗陰性報告」以供查驗?

回答:不需要。但入境後仍需居家檢疫 14 天。
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kuroqie

コメントありがとうございます。

私も悪意があるとは思いませんが、意識があまり向いておらず、やはり選挙に関係ないからか、そこまで積極的に待遇改善に動こうとしていないように感じます。

アドバイスもありがとうございます。
陳情は、振興券に関しては内政部と行政院に出し(経済部にも出すべきでしたが)、両方から「管轄のお役所に意見を回しておく」という回答をもらいました。内政部への意見は、振興券そのものじゃなくて、部長の発言内容に対してだったのですが…。でも全ての陳情に番号を付けて、進捗状況を確認できるようにしている点はすごいと感じました。

陰性検査については執筆時点の状況です。
後に不要になったことは把握していたのですが、追記をしていませんでした。ご指摘ありがとうございます。修正しておきます!

また、ご購読いただき誠にありがたいのですが、まだ不慣れなもので準備が整っていませんので、非常に申し訳ないのですが、配信は停止としました。ご了承いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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はな

興味深く拝読させていただきました。
実は私も同じことを感じていました。
在台日本人の知人は、なにかと台湾をべた褒めばかり。
そして日本の外国人に対する政策をよく批判します。
それなのに今回の振興券や給付金については外国人除外と分かったとたん、仕方ないよねと一言でその後スルーしています。
どの国でも良い面、悪い面ってあると思います。
特に今回のコロナ禍はそれが顕著に出ているような気がします。
光が当たれば必ず影ができ、立体感、奥行き感がででます。
キラキラ明るいばかりのノッペリな世界はつまらないと思います。

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kuroqie

私からすると、はなさんのご知人が「仕方ないよね」で済ませられることのほうがすごいです。
配偶者の方なのでしょうか?
「どの国でも良い面、悪い面ってある」という点に全く同意です。
おっしゃるように、明るい面だけではつまらないです。
逆に悪い面だけでもつまらないから、「いい面だけ」とか「悪い面だけ」じゃなくて、両方をありのままに伝えていきたいなと思っています。

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仁愛路

初めまして。私、台湾に10年程滞在し、今は日本で生活しております。滞在中や帰国当初は台湾、素晴らしいなぁと思っておりました。日本もやればいいのに、って。違いました。帰国後調べたら、日本もいろいろやってました。先日の10万円の給付金日本に住民票ある人には外国人であっても、支給されました。日本人外国人の差別なく。子供が台湾で幼稚園に通う時補助金の話があったのですが、外国人は受けられませんでした。日本は住民票があれば日本人と同様に外国人も受けられました。結構、日本頑張っているんだなぁ、と。日本滞在の台湾人に日本の事を批判された時はちょっとイラってしてしまいました。知らないよね、自分の国のこと。って。

うちは、多くの税金を台湾に払いましたが、当時は補助金的なものが受けられないのはしょうがないと思ってました、でも、日本に戻って一般的な事は、住民票で動いていて、外国人も基本的には同じ補助がある事をしりました。

台湾好きですが、全てが素晴らしいわけじゃないよなぁと言う感想です。

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kuroqie

初めまして。コメントありがとうございます!

台湾はアピール上手、日本はアピール下手だなと思います。
日本の場合は、あまりひけらかすのを美徳としない国民性のせいかなとも推測します。

台湾のいいところだけ、日本の悪いところだけ見るのではなく、
それぞれのいい点、悪い点を等しく見られるようになればいいなと思います。

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