実際に意見を出してみて分かった台湾官公庁の陳情対応の3つのすごさ

 先日の投稿(下記参照)で私は、振興券の対象から台湾人の配偶者ではない外国人が除外されたことに対する不満をつづっていました。これに関連して実は、内政部(内務省)と行政院(内閣)に対して公式サイトから意見を送っていたのですが、それに対して返信が来ました。この一連の流れで「台湾のお役所すごい」と思ったことがあったので、それをまとめていきます。

台湾はまさにムラ社会だ~振興三倍券を巡って~【台湾の外国人受け入れ政策課題】 台湾はまさにムラ社会だ~振興三倍券を巡って~【台湾の外国人受け入れ政策課題】

ここがすごい!その1:返事をきちんとくれる

 私は公式サイトから意見を送ったのですが、内政部と行政院、そして担当機関の経済部の3省庁全てから、きちんと返信をいただけました。一つ一つの意見に対してきちんと対応してくれるのはすごいと感じました。

 内政部の返事は特に早く、6月2日に意見を送信し、5日に下記の返信が来ました。

内政部からの返信

 内政部に送った意見は内政部長の発言(過去記事参照)に対する抗議的意味合いもあったのですが、ここの部分は一切無視され、「担当は経済部だから、経済部に意見を渡しておくね」という返信でした。

 行政院は市民から送られてくる意見が多いのか、6月3日に意見を送ったのにしばらく何の音沙汰もなく、「無視されたのかな」と思っていたら、7月16日に下記の連絡が来ました。

行政院からの返信

 そして7月21日に、担当機関の経済部(経済省)から下記の返信が来ました。

経済部からの返信

  重要な部分を抜粋します。

一、振興三倍券領取資格比照98年發放之消費券,具中華民國國籍且現有戶籍之國民及其具居留權之配偶皆可領取。有關您的建議,將列入未來政府制定政策考量。

行政院院長電子信箱小組から7月21日に受信したメールの一部

 ざっくり訳すと、「振興三倍券の受領資格は2009年に発行した消費券にならったもので、中華民国国籍かつ現在戸籍を有する国民、および居留権を有するその配偶者はいずれも受け取ることが可能です。お寄せいただいた提案は、政府の今後の政策制定の参考にします」というお返事でした。

 なので、振興券問題のQ&Aをまとめると、

Q. なんで配偶者以外の外国人は対象外になったの?
A. 2009年(馬英九政権)の消費券の受領資格を適用したからだよ。

 ということが分かりました。
 予想してはいましたが、本当にそうだったということが分かって納得しました。

ここがすごい!その2:いちおう受け止める姿勢を見せてくれる

 上記の返信で、「お寄せいただいた提案は、政府の今後の政策制定の参考にします」と書いてくれてところも好感が持てました。

 実際に参考にしてくれるかは別として、「ちゃんと意見が届いたのかな」と思えて嬉しかったです。

ここがすごい!その3:進捗状況も確認できる

 「さすがIT大国の台湾!」だと思ったのは、公式サイトから送った意見が番号で管理され、進捗状況がネット上で随時確認できるようになっていたという点です。全ての省庁でこの対応を行っているかはわからないのですが、少なくとも私が意見を送った内政部と行政院は意見を送った後に受理通知メールが送られてきて、そのメールに記載されたURLから進捗状況が確認できるようになっていました。

内政部の進捗状況確認ページ

台湾のお役所は気付いてないだけ?

 私はこの件に対する不満を身近な人に繰り返し伝えていたのですが(絶対ウザいと思われてたはずです。それでも聞いてくれていたみなさんに大感謝)、台湾の人からも、在台歴が長い日本人からも一様に、「政府は問題に気付いてない、または何も考えてないだけじゃない?」という意見をもらいました。

 私も今はなんとなくそんな気がしています。というのも、信頼できる消息筋の話や、私が実際に関連の役所に電話で問い合わせた際に感じたことを総合して、「外国人の存在にまで頭が回ってないんだな」という印象を受けたからです。

 先日、コメントで「政府に悪気はないのではないか」という意見をいただきました。私もその意見に同感です。

意見を細かく伝えていくのは大事

 そして、この件について「意見を伝えていくのはいいこと」だという意見も複数の人からもらいました。

 確かに、「在台外国人がどれだけ理不尽な思いを抱えているのか」というのは、やはり当事者ではないと分からないし、お役所が本当に外国人の不満に気付いていなくてこういう措置を取るのであれば、やはり声は届けていくべきだと思いました。

 単に友人に愚痴を言うだけではお役所まで声は届かないので、私はこれからも、なにか不満があれば担当機関に意見は入れていこうと心に決めました。

 台湾に暮らす外国人の声が少しでも多く政府に届くことで、在台外国人への待遇が少しづつ改善していけばいいなと願っています。

 

 

2 COMMENTS

おっさん

陳情制度の件、取りあげていただきありがとうございました。台湾にせよ、日本にせよ、オープンな政府というのは結構実現していて、やってみる価値はあると思います。

もちろん該当の問題について、過去の議論や政策の趣旨を踏まえて、上手くその正当性を主張しないとスムーズに通らないことも確かだと思います。これは大きな会社の部門間調整と似ていて、調整のしやすさも考慮して提言できた方が、担当者もやる気が出て、返答もより前向きになる気がします。

どうしても公共部門ってお堅い感じが出てくるのですが、やみくもにクレームをぶつけるのではなく、中で働いている人のことも考えながら、社会全体に役立つ提言ができ、世の中を一歩でも良い方向に動かせるといいですね。

ところで陳情時は公文の形式で中国語を書かれたと思うのですが、台湾で留学されているときにそういう公文の書き方的なものは学ぶのでしょうか?

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kuroqie

コメントをいただいた直後のタイミングで行政院から返信が来たので、記事にしてみました。
こちらこそ、記事のヒントをいただきありがとうございます。

私はタイトルでは「陳情」としたのですが、実際は「ご意見」の性質だと思います。
ですので、特に公文書の形式では書いていません。
ただ単に、一外国人として、「なぜ外国人は配偶者以外は対象外になったのか」「外国人でも税金を払っているのに不公平ではないか」、また内政部に対しては「内政部長は新住民は『すでに台湾の一員』と言ったが、その他の外国人は『台湾の一員ではない』ということなのか」という意見を伝えました。

留学時は正式な文章の書き方は習っていません。論文も、見よう見まねでという感じです。
日本語教育だとビジネス会話、ビジネス文章の書き方を教えているようですが、中国語教育はここの部分があまりカバーされていないように思います。
私が大学院に通いながら語学学校に行っていた時も、ビジネス中国語のクラスはなかったように感じます。
個人的には、ここらへんの教材がもっと充実してほしいなと前々から思っています。

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