【ネタバレ注意】『時をかける愛』複雑な時間軸を考察 謎をひもとく

注意

この記事はすでに作品を最終回まで見終わった人向けです。ネタバレが大量に含まれます。見終わっていない方、見る前の方はこちらの記事をどうぞ。

近年最高傑作の台湾ドラマ 「時をかける愛」(想見你)を“神劇”にした3つの要素

 いやぁ〜、複雑な物語でしたね。頭がこんがらがりまくります。
 そこで、自分の頭の中の整理を兼ねて、登場人物別にあらすじを振り返りながら、複雑な時間軸を解説&考察していきたいと思います。

 ※下記文章の一部にはそのエピソードの登場話を備忘録的に書いています。登場話は台湾版のもので、日本での放送・配信時の話数とは異なります。(台湾版は全13話)

子維の時間軸

 雨萱が付き合っていた王銓勝の中身は実は最初から李子維だったのですね。

 1998年の子維は、未来から来た黄雨萱(姿は陳韻如)に恋をします。そして雨萱(in韻如)から自分が2019年から来たこと、1999年の旧暦12月30日(2月14日)に韻如が殺害されることを伝えられます(第7話)。

 その後、韻如の死、莫俊傑の刑務所入りなどを経験した子維は2003年、移住先のカナダから一時帰国し、タイムスリップのトリガーとなる伍佰(ウーバイ)の「LAST DANCE」を聞きながら車を運転している際、重大な交通事故に遭います。

 これによって子維は2010年、入水自殺を試みていた王銓勝の身体に入り、王銓勝として生きることになります。子維(in詮勝)は1998年に雨萱が言っていた亡くなった彼氏・銓勝に自分がなってみて初めて、あの時の雨萱の話が本当だったと気がつくのです(第10話)。

 子維(in銓勝)は詮勝に入れ替わった直後、文磊叔(陳韻如のおじさん)を訪ね、入れ替わったことを伝えます。文磊叔は1998年当時、雨萱から「私は2019年から来たということを伝えられていました。子維はこの際、自分の身体(※元の子維)が植物状態になっていることや、韻如殺害で刑務所に入っていた莫俊傑が出所後(2008年)に自殺したことを知ります。

kuroqie
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ここで一つ疑問。

子維(in詮勝)は2017年の墜落事故後、2003年に戻ります。しかし、子維が目を覚ますのは事故から2週間後。だから2010年の時点では子維は植物人間ではないんですよね。よって、詮勝の姿の子維には嘘を伝えていることになります。

これはなぜ?ということなんですが、文磊叔がおじさん子維と電話をする際に「全ては計画通り」と伝えているシーンがあったので、おじさん子維が口封じをしていたのかなと。でも、そうすると「じゃあなぜ口封じをしたのか」という疑問がわきます。


 
 2010年から銓勝が亡くなる2017年までの期間は、子維の魂(もしくは記憶)を持つ人物が同じ時間軸に同時に2人存在することになります。便宜的に以下では詮勝を経験して2003年に再び戻った子維を「子維(第2)」とします。

 子維(in銓勝)はその後、雨萱と出会うために雨萱と同じ大学に入り、雨萱と付き合うために頑張るのでした。

 そして2017年の墜落事故の前、銓勝とおじさん子維(第2)は空港で会話をし、おじさん子維は銓勝から雨萱との思い出が詰まった携帯電話を受け取ります(第10話)。
 →だから、詮勝の携帯電話は解約されておらず、雨萱が送ったメッセージが既読になった(第2話)。

 空港でおじさん子維と話をする時、銓勝(中身は子維)はもちろん、飛行機が墜落することは分かっていました。ですが、自分が雨萱と出会えたのは、墜落事故で銓勝が亡くなったためだとも知っているため、この選択肢を選ばずにはいられなかったのです。

 そして、子維(第2)は2008年、出所した俊傑を迎えに行き、俊傑の自殺を止めようとしましたが、止められませんでした。これが、雨萱に3度目のタイムスリップをさせようとする動機になりました

 2019年、タイムスリップを経験した雨萱とおじさんのカフェで対面した子維。その日の夜、雨萱と一夜を過ごし、プロポーズの指輪に刻んだ言葉のメッセージを伝えます。

only if you asked to see me,

our meeting would be meaningful to me

只有你想見我的時候=雨萱の指輪

我們的相遇才有意義=子維の指輪

「君(=雨萱)がぼく(=詮勝/子維)に会いたいと思ってこそ」=雨萱が時を超えて1998年にやって来る、
「ぼくらの出会いは意味を持つ」=1998年に雨萱が未来からやってこなければ、子維は雨萱を好きになっておらず、詮勝として出会うこともない。


kuroqie
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この指輪を子維(in詮勝)がプロポーズのときに渡そうとしていたと考えると、すごーくロマンチックでキュンキュンします。

このドラマは、どこまで行っても抜け出せない「メビウスの帯」を題材としているそうのなのですが、登場人物のぐるぐる巡る閉塞状態の運命を「指輪」というメタファーで表現しているところもにくい演出です。

 この晩、雨萱は3度目のタイムスリップを試みましたが失敗に終わります。そして子維はその翌日、雨萱の家から日記とウォークマンを持ち出して逃げる芝齊を追いかける際、芝齊に殴り殺されます。

雨萱の時間軸


<2019年>
 恋人を飛行機墜落事故で亡くした雨萱は、事故から2年経っても悲しみから抜け出せずにいました。ある日、会社で開発した「もう一人の自分」を探すアプリで、自分にそっくりな女の子が詮勝と一緒に写った写真に偶然出会う。写真の手がかりから、その女の子、すなわち陳韻如のおじさんに出会い、彼女がすでに亡くなっていることを知ります。

 その後、差出人不明の小包でウォークマンとカセットテープが送られてきます。
→このウォークマンは莫俊傑と李子維から韻如(スリップ前)への誕生日プレゼントで、カセットテープは子維がレコード店で予約したもの。 

 詮勝の告別式を終え、宜蘭から台北に戻るバスの中でウォークマンを取り出し、カセットテープ(LAST DANCE)を聞いて目を覚ますと、そこは1998年の病院で、陳韻如になっていました。(※この時はタイムスリップしたとは気付いておらず、雨萱の記憶は夢だと思っていた。1回目のタイムスリップ

 1998年をしばらく過ごした後、警察が殴打事件の調査のためおじさんのレコード店に来た時点で、雨萱は2019年に戻ります。そしてその後、おじさんからある日記を受け取ります。そこには、夢の中で自分が書いたものと同じ内容が書いてあり、1998年の出来事がただの夢じゃなかったと気付きます。そして、日記に「彼こそが王銓勝」と書いてあるのを発見し、再びタイムスリップを試みるのでした。

 タイムスリップで次に戻ったのは1998年のレコード店に警察が来る直前(前回未来に戻った時点のちょっと前)でした(2回目のタイムスリップ)。

小ネタ

5話で子維が麺にお酢をかけまくるシーン。子維から「これが俺のスタイルだ」と言われ、雨萱は銓勝からも同じ言葉を言われたことを思い出します。この時、私は見ながら違和感を感じていたのですが、詮勝が子維だったことがわかってみると、「どおりで」という感じです。しかも、そのあとの麺のジョークが、実は雨萱は詮勝(子維)から聞いたもので、子維は雨萱から聞いたものだったというなんとも不思議なものだったことがわかります。

 雨萱は子維の部屋で後ろ姿の女の子の絵を見た時、詮勝から「この女の子は初恋の子」だと話していたことを思い出し、子維が詮勝であることを確信します。そして子維に抱きついたその時、2019年の同僚・昆布の声で2回目のタイムスリップから戻るのでした。

 その後、カフェを訪ね、おじさん子維に出会った雨萱は3回目のタイムスリップを促されます。子維からは「何もしなくていい。ただ1999年のみそかを乗り切ればいい」と言われたのでした。
→そうすれば俊傑は逮捕されないし、自殺もしない。

 しかしその晩、雨萱は自宅のベッドでおじさん子維に添い寝をしてもらいながらタイムスリップを試みようとしましたが、成功しませんでした。

考察:なぜこのときはタイムスリップが成功しなかったのか?

 タイムスリップに必要な条件はウーバイの「LAST DANCE」のカセットテープに加え、「会いたい」という強い思いが必要なのではないかと推察します。この時、雨萱は子維に会えていたため、過去の子維に会いたいという気持ちが薄かったということが想像できます。

 また、友人の考察によると、カセットテープ自体がループ構造になっているため、これもメビウスの帯のメタファーなのではないかと。ここの部分もすごく説得力があります。


 そして翌日夜、自宅を訪ねてきた芝齊から注射で眠らせられ、日記とウォークマンを奪われます。そして、芝齊を追いかけていった子維は途中で芝齊に殴られ、戻らぬ人となってしまいます。

 雨萱は子維を取り戻そうと、再度のタイムスリップを誓います。ですが、ウォークマンは芝齊によって壊されてしまい、やっとのことで修理をして、3度目のタイムスリップを行います。

 そして1998年に戻ることに成功した雨萱ですが、戻った先は韻如の体の中に閉じ込められた空間でした。そして、韻如が自分のフリをして子維らと接しているのを目の当たりにします。そしてその過程で、韻如が自分と入れ替わったことによって苦しみ、そのせいで自殺をしたことを知ります。そして韻如がビルから飛び降りた直後に2019年に戻ります(第13話)。

 2019年に戻った雨萱はもう一度カセットテープを聞こうとしましたが、ウォークマンは壊れ、もう聞けなくなってしまいました。

 時は過ぎて2020年12月30日、LAST DANCEのカセットテープを車のラジカセで聞いていた雨萱は、1999年2月14日、韻如がビルから落ちようとするまさにその瞬間に戻ります(4度目のタイムスリップ)。

 この時、雨萱(in韻如)は近くにいた俊傑に助けられ、命をとりとめます。そして、韻如の死を防ぐことに成功するのでした。

Q. 最後、なぜタイムスリップできた?


 この時のタイムスリップによって未来が変わったため、この4度目のタイムスリップはこれまでの無限のループとは異なる、新たな展開だったことがわかります。ではなぜこの時は過去とは違う展開にすることができたのでしょうか?ここの部分はよくわかりません。

 一つだけ考えられることはというと、以前のタイムスリップは「過去を変えたい」という思いがありましたが、2020年の雨萱は日記に「自分は何も変えられない。できるのは思うことだけ」とつづっていたことから、「変えたい」との気持ちを捨てていたことがわかります。雨萱の思いが変わったから、これまでのループに変化が生じたのかなと。

Q. 日付の意味とは?

 
 韻如が死亡する日は1999年の2月14日、すなわち旧暦12月30日のみそか(小年夜)です。そして、雨萱が韻如の死を防ぐことに成功した4回目のタイムスリップをした日は2020年の12月30日、すなわち新暦12月のみそかです。両方とも「12月30日」なんですよね。ここにはなにか意味がありそうです。

 一つの推測としては、旧暦と新暦がカセットテープのA面、B面のような構造になっていて、12月30日というポイントで再生される面が入れ替わり、だからこそ、不幸の連鎖のタイムラインから、幸せなタイムラインに変わったのではないか。やや強引ですが・・・。

 韻如の死を防ぐことはすなわち、未来を変えることにつながります。再びこの不幸のループが発生するのを防ぐため、雨萱は俊傑にカセットテープを渡し、処分するよう頼みます。そして海辺で子維と最後の言葉を交わすのでした。

 これによって未来の雨萱と詮勝のカップルは消えることになります。

 そして、自殺願望があった韻如は、昏睡中に見た「夢」で「もう一人の自分」に言われた「あなたは世界に失望したんじゃない。たくさんの期待があるんだ」「気にかけてもらえることは当然じゃない。気にかけてくれる人を大切にしないと」という言葉のおかげで、前向きな姿勢を持てるようになったのでした。

6歳の雨萱

 6歳のちび雨萱は、未来から大人雨萱がタイムスリップしてくるタイムラインでも、タイムスリップのループが終わったタイムラインでも、どちらでも同じタイミング(1998年12月5日)で子維と出会います

 雨萱がタイムスリップをしてくるタイムラインで迷子のちび雨萱と出会った子維は、ちび雨萱から「どんな女性が好き?」と聞かれ、雨萱(in韻如)のことを考えながら「明るくて、自立していて、自分の考えを持っている女性」などなどと回答。そしてちび雨萱は「お兄ちゃんが言ってる女性って私みたい」と断言。子維から「お前みたいなガキンチョは好きになんねーよー」と言われます(第6話)。

 帰り際、子維はちび雨萱から「私は黄雨萱」と自己紹介されますが、この時点では気に留める様子はなく、その後、自分の部屋に戻った後で「そういえば韻如が夢の中で見た自分とそっくりな人物が雨萱という名前だったな」と思い出します。でもニマニマするだけで、相変わらず真剣に考えていない様子でした。

 そして、エンディング。大人雨萱が過去にやってこないタイムラインでもちび雨萱と出会い、同じ質問をされます。

 つまり、二人の出会いはタイムスリップをしてもしなくても「必然」であり、「運命」だったのですね

kuroqie
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ロマンチックすぎてキュンキュンします。
エンディングを見た後に、第6話のシーンを見ると高校生子維とちび雨萱のやり取りがジワります。


 おまけ映像では、台北でデザイナーとして自分の事務所を構える子維のところに、元気に過ごしている俊傑と高校生になった雨萱が誕生日ケーキを持ってくるシーンが描かれました。高校生雨萱の「子維お兄ちゃん」という声かけと二人の笑顔からは二人がタイムスリップをしないタイムラインでも穏やかな愛を育んでいることが伺えます。

kuroqie
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ハッピーエンド過ぎて、もうたまりません。 

芝齊の時間軸

<1998年>
 兄・宗儒(=入れ替わった芝齊)の引き出しで、韻如の写真を見つけた小学生芝齊。兄に「この子がほしいか」と聞かれてうなずくと、「いつか君のものになるよ」と兄からささやかれます。

 兄は韻如の死後、精神病で療養所に入院します。

<2019年>

 心療内科医として働く芝齊。患者の雨萱から、兄・宗儒のことを聞かれ、雨萱が「1998年に戻った」と話していたことが「夢」ではなく、本当に戻ったのだと知ります。そして兄が精神病で療養所に入っていることを雨萱に教えるのでした。雨萱が帰った後、診療室のロッカーから韻如の写真を取り出して眺め、ニヤリと不気味な表情を浮かべます(第10話)。
 →このシーンの冒頭では石を手入れする姿がわざわざ挿入され、意味深です。過去で韻如を殴った石かと思われます。

考察:この時に気が付いた?

 2019年に雨萱が宗儒について尋ねた時点では、芝齊はタイムスリップをしていない。ですが、ロッカーに入れていた韻如の写真を見て、兄が当時「いつか君のものになるよ」と言っていたことを思い出します。この時点でもしかしたら、あの時の兄が未来から来た自分だったと気づいたのではないかと推測します。


 そしてその日の夜、雨萱の自宅を訪ねた芝齊。日記とウォークマンを見せてもらいます。雨萱がベランダでおじさん子維と電話をしている間、例のウォークマンでLAST DANCEを聞き、タイムスリップします(1回目)。

 タイムスリップした先は交通事故に合いそうになっていた韻如を助けようとして、宗儒が気を失い、韻如の声で目を覚ました時でした。

 つまり、あのタイムラインの中でいちばん古い過去に戻っていたのは芝齊だということになります。

 宗儒になった芝齊はその後、「私がほしいんでしょ?」という韻如の幻覚に触発されて、韻如への性的欲望を思い出し(自慰する映像、カレンダーには「2004年」とあることから、これは宗儒ではなく芝齊ということがわかります)、「殺して」という韻如の幻覚を目にして韻如を石で殴ります。もう一度殴ろう(殺意)としていた時、未来の雨萱の呼びかけで再び未来に戻ります。(雨萱が入れ替わるのはこの後です) 

Q. 謝芝齊はなぜ過去に行った?

 過去の凶悪な犯行を行っていたのは謝宗儒ではなくて、いずれも芝齊でした。

 ではなぜ過去に戻ったのか?

 過去に戻る条件の一つに「会いたいという強い思い」が関係することを考えると、芝齊は韻如に会うため=韻如を自分のものにするために戻ったのではないかと考えます。診療室のロッカーにわざわざ韻如の写真をしまっていたことからも、韻如への強い思いが感じられます。

Q. 韻如の幻覚は何?


 過去に戻った芝齊(in宗儒)は、幻覚で見た韻如の声をきっかけに犯行に及ぶのですが、なぜ幻覚が見えたのかという点はよくわかりません。2019年の芝齊は精神的に病を抱えているようには見えませんでした。

 それとも、小学生のころから猟奇的性格を持っていた芝齊は、兄(=未来から来た自分)から「大人から望まれる姿を演じればいい」といったことを教えられていたため、ただ単に「普通の人」のフリをして生きていただけなのでしょうか。

 1回目のタイムスリップから戻った芝齊は、雨萱を注射で眠らせます。その後子維が帰宅したため、日記とウォークマンを持ち去って逃げます。

 逃走中、追いかけてきたおじさん子維を植木鉢で殴り、日記とウォークマンを持って立ち去ろうとしましたが、子維の「おまえは宗儒なのか、それとも芝齊か」の言葉によって子維のほうに再び引き返し、より重そうな植木鉢で頭を殴ります。最初の殴りに殺意はなさそうですが、2回目は明らかな殺意を感じます。

Q. なぜおじさん子維を殺した?


 殺した理由にはやはり「おまえは宗儒なのか、それとも芝齊か」の言葉が関係しているように思います。しかし、なぜそこで殺意が芽生えたのかはよくわかりません。「なにも殺さなくてもいいのに」と思いませんか?

 韻如を殺害しようとした理由は、幼少期に思いを寄せていた韻如の「一番美しい姿」をとどめ、自分のものにしようとしていたからだと思います。そこから派生させると、芝齊は自分もタイムスリップをしていることを子維に気付かれたことで、韻如の殺害を邪魔されることを恐れたからかなと。

小ネタ

台湾のある記事では、芝齊と雨萱は実は男女の関係だったのではないかという考察も目にしました(URLを保存するのを忘れ、再検索してみたのですが見つかりません)。その考察では、芝齊が夜中に雨萱の家を訪ねた際、雨萱がさほど驚かずに家の中に入れていたことや、注射をされる際、芝齊が背後に来てもあまり警戒していなかったことなどを根拠に挙げていました。

確かに、この部分には私も違和感を持っていたんですよね。無防備すぎないかと。でも、男女の関係(恋人ではない)だったと想定すれば納得できます。


 子維を殺し、日記をウォークマンを持って自宅に帰った後、芝齊は2度目のタイムスリップをします。2度目のタイムスリップでたどり着いた時間は、1回目のタイムスリップで未来に戻った時点=韻如を石で殴ろうとしていた時点(1998年10月28日)だと思われます。ですがこれも、体の中にいる宗儒の「やめろ」という声によって阻止されます。

 それから翌年2月14日まで宗儒を演じていたのは、ずっと芝齊でした。その日の夜、芝齊は韻如を薬物で殺そうとする直前に、警察の声で目を覚まし、殺害は未遂に終わります。

韻如の時間軸

 韻如の死は「他殺」ではなく、「自殺」でした。

 1998年、孤独に生きる中、子維に片思いをしていた韻如。一度は振られてしまいますが、タイムスリップをしてきた雨萱の存在により、子維と両思い気分を味わうことができるようになりました。

 しかし、結局最後には雨萱のフリをしていたことがばれ、冷たく突き放されてしまいます。そして、フリをやめたとたん、家族や同級生から心配され、「昔の陳韻如は嫌なやつだった」と言われてしまうのでした。

 雨萱になったからこそ、「自分はダメだ」という思いがよりいっそう強くなり、自分を自殺に追い込んでしまいました。

 そして俊傑は、韻如が「自分がいなくなるなら自分で死ぬより殺されたほうがいい」と考えていることを読唇術で知っていたために、韻如の自殺を他殺に装い、自分が罪を着ることにしたのでした。

考察:入れ替わられる側の共通点

 韻如も詮勝も人間関係に悩み、孤独や自殺願望を抱えていました。

 入れ替わられる直前の韻如は子維から「友達にしかなれない」と言われた上に、家に帰ると家族がおらず、「捨てられた」という悲しみにくれていました。詮勝も同様、思いを寄せていた相手から裏切られ、悲しみのどん底にいたのでした。

 雨萱と子維は正反対。明るくて人気者です。

 雨萱や子維と入れ替わったのは、韻如と詮勝の二人がそれぞれなりたい姿だったからなのかなと感じました。

感想・キャストの演技力


 前記事で言及した「キャストの演技力」ですが、アリス・クーが本当にすごい!

 特に際立っていたのが、1998年に陳韻如が黄雨萱のフリをするシーンです。

 1998年の陳韻如と黄雨萱の外見的な違いは、前髪を下ろしているか上げているかが大きな特徴だったのですが、このときは陳韻如が黄雨萱のフリをしてるので、前髪は上げているんですよね。それでいて、目線の動かし方や微妙な表情、身体の動きなどで、「あれ?これってもしかして…」と視聴者に感じさせるところが超絶上手い。

 そして、黃雨萱のフリをした陳韻如をスクーターに乗せているシーンのグレッグ・ハンも、セリフにはだしていないものの「あれ?」と違和感を感じている様子を表情のみで見せているところが素晴らしい。そして、「違うな」と感じながらもニパッと笑顔で接してあげてる子維に胸キュンです。

 この一連のシーンって、ふたりとも高い演技力がないと視聴者に違和感を残すことはできないので、キャスティングも最高だったと思います。

 そして、おまけ映像での高校生役のアリスが可愛すぎ。

 最終回では、「未来が変わる」という事実を前に、二人が海辺で抱き合いながらキスをするシーンは涙なしでは見られません。でも、最後は全員ハッピーエンドで明るい気分になりました。

 視聴回数を重ねるごとに、新たな発見があり、理解が深まる「時をかける愛」。一度見終わった方も、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。

 私はまだまだ理解できない点がたくさんあるので、上にあげた疑問点の中で、「こうなのでは?」という意見があればぜひ教えて下さい!

参考記事

 時間軸を考察する上では「雀雀看電影」の「看懂史上最複雜台灣穿越劇《想見你》解析,時間軸+彩蛋全解密:6人3組人馬穿越時空圖解」の記事を大いに参考にさせてもらいました。

 わかりやすい図が掲載されているので、さらに理解を深めたい方にはおすすめです。

アイキャッチはSharan VijayagopalによるPixabayからの画像です。

5 COMMENTS

lion

はじめまして。
検索からこの記事に辿り着きまして、とても分かりやすく興味深い考察をありがとうございます。
完璧な考察の中から一点だけ気になったところがありまして「謝芝齊と黄雨萱が男女の関係だったかも」というのは違うかな…と思いました。

まず芝齊が雨萱の家に来た時「どうして家に(来たんですか)?」という旨の少し引いたような台詞を言っていたことと、その時点では詮勝と雨萱が二人で暮らしていたわけなので、もしそれまで男女の関係であったとしたら雨萱は気まずくならないよう家に来た芝齊を帰らせようとするのではないかと…雨萱と芝齊の妙に近い距離感は、雨萱にとってかかりつけの医師であることから来る信頼感ではないかと思いました。

なにより作品として詮勝(子維)と雨萱の究極的な愛がこのドラマの一番の魅力だと思いますので、それに水を差すような事は裏設定であってもしないのではないでしょうか。(個人的な願望も入っていますが…)

一番好きな台湾ドラマだったので長文のコメント失礼いたしました…。
台湾大好きなので今後もkuroqie様の発信を楽しみにしております!

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kuroqie

lionさん、コメントありがとうございます。

このドラマ、見れば見るほど、考えれば考えるほどいろいろ考察できますよね。私のこの記事はあくまでも私なりの考えなので、見解の一つと思っていただければ嬉しいです!

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nakajima

考察とても面白く読みました。とくにのっとられる側の心理状況についての考察、ハッとさせられました。さてループを最後、なぜ抜け出せたかについて、不完全ながらも私の意見がありますので、ここに書きます。3度目のタイムスリップの失敗についてです。今回の子維は詮勝から結婚指輪を受け取りました。このまま雨萱と子維が二人で幸せに暮らして欲しいという願いがあったのでしょう。その行為の結果、雨萱と子維はタイムスリップするより、このままでという気持ちが強くなったのだと思います。結果、タイムスリップを失敗してしまった。つまりそれまでのループでは、ここでタイムスリップに成功していたのだと思います。タイムスリップのタイミングの違いが、結果の違い)を生んだのではと思います。

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kuroqie

nakajimaさん、コメントありがとうございます。

タイムスリップの失敗はタイミングの違いという点、なるほどです。
もう一回作品を見てみたくなりました!

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YOS

はじめまして。この記事読ませて頂いてすごくわかりやすくてありがたかったです。私もほとんど同じ意見です。ただジーチーとユーシュエンは男女の関係ではないと、いや関係なんて結ぶはずないって思っています。他の方も言われていますが、ジーチーがユーシュエンの主治医という安心感あって家にあげてしまったのではないかと思っています、それにしても無防備すぎるわとは思っていました。最後のあのおまけ映像でのズーウェイの3つ目の願いは高校時代に出会った2019年からタイムスリップしてきたユーシュエンに会いたいって事だったのではと、そしてタイムスリップしてきたユーシュエンの本来の姿である高校生ユーシュエンに(現代で)出会えいい関係に発展したのではないかと、それと誕生日ケーキを持って来たジュンジエにズーウェイがお前一人?って聞いていたのでジュンジエの気持ちがユンルーに通じてこちらの二人もいい関係に発展しているのではないかとも思っています。ちびユーシュエンが私(タイムスリップしてきたユーシュエン)の子ども時代なのよと高校生ズーウェイに言い聞かせてると思っているのは自分だけでないと思っています。

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