日本で陽性者になって改めて気付いた台湾のコロナ政策の優秀さ

コロナ抗原検査キット陽性

先日日本に一時帰国したことはブログで書いたのですが、日本滞在中、台湾に戻る直前に新型コロナウイルス陽性になってしまいました。(今は日本での療養期間を終え、無事台湾に戻っています)

日本で陽性になって初めて、日本のコロナ対応の制度的不足を身にしみて感じた一方、台湾のコロナ政策の素晴らしさが改めてよく分かりました。そこで、日本と対比させる形で、私が優れていると感じた台湾のコロナ政策について紹介していきます。

【お断り】この記事の内容は、私が一時帰国中という限られた期間、範囲で経験したことを基にしているので、あくまでも私個人の一つの見解であるということをご了承ください。

「コロナになったらどうするか」情報周知の徹底

私の場合、実家の家族が最初にコロナ疑いの症状を発症し、家庭用検査キット(抗原検査)で陽性反応が出たのですが、まず最初に直面した問題が「次はどうすればいいの?」ということでした。

保健所に自分から連絡したらいいのか、それとも医療機関の受診が先か、家族はまずそこから分かっていませんでした。

台湾の場合は、中央感染症指揮センターが毎日記者会見を開き、メディアも連日関連情報を伝えています。さらに、衛生福利部疾病管制署の公式LINE「疾管家」のように、公式の情報を市民に直接伝えるツールも用意されています。そのため、「コロナになったら、またはコロナ疑いの症状が出たらどうすればいいのか」という情報の周知が日本よりも徹底されているように思います。

衛生福利部疾病管制署の公式LINE「疾管家」のスクリーンショット。毎日感染者情報が届く
感染者情報のほかにも、新たに発表された措置なども随時通知されるため、コロナ関連の最新情報が入手しやすい

また、コロナ関連でなにか困ったことがあった際に相談できる専用ダイヤル「1922」の存在もありがたいと感じました。

一方、日本は自治体レベルではコロナ相談ダイヤルを設けているようですが、台湾のように全国一律のわかりやすい番号ではないので、いざとなった時に利用するのは難しいと感じました。さらに、居住地域の保健所のコロナ対応窓口も、時間によっては30分以上電話をかけ続けてもつながらないことがあり、もし自宅療養中に体調が急変しても、すぐに相談ができずに不安を感じる人も多いのではないかと心配になりました。

全国的な制度の統一

先ほど紹介した情報周知の部分にもつながるのですが、台湾の場合はコロナの関連の制度が全国でほぼ統一されているところもわかりやすくていいと感じました。

例えば、検査キットで陽性になった場合の対応

日本の場合は自治体ごとに対応が違うことを今回初めて知りました。

私の実家がある福岡県では、有症状者への家庭用抗原検査キットの無料配布を8月8日から開始しており、検査キットで陽性反応が出た人に対し、オンラインでの陽性者登録を受け付けています。ですがお隣の佐賀県の状況を調べたところ、県としてこのような制度はなく(8月27日現在)、県内の一部の町や市レベルでは検査キットの配布を行っているところもあるという状況でした。

また、オンライン陽性登録制度を設けている自治体でも、対象年齢が異なっていました。福岡県の場合は対象を小学4年生以上、65歳未満(当初は40歳未満)としていますが、大阪府は12〜49歳が対象となっています。

正直、自治体ごとにこれほどまでに制度がバラバラなのであれば、情報の周知があまりなされてないのも納得です。

日本は国土が広いので、台湾のように制度を統一しにくいという事情はもちろんあると思いますが、対応がバラバラなのは、台湾のように感染症政策を取りまとめる中央感染症指揮センターのような組織がないことも一つの要因なのではないかと感じます。

ただ、福岡県の検査キット配布事業に関しては、居住者だけでなく、私のような長期滞在者も対象になっていたのはありがたかったです。(しかし、やはり国内在住者を念頭に置いているので、記入必須である携帯番号の欄に海外の携帯番号を記入できない点は困りました)

受診プロセスのわかりやすさと医療資源の適切な配分

今回、私は家庭内感染だったのですが、重病を抱える家族にも感染疑いの症状が出て、医療機関を受診しようと各所に電話していたのですが、電話をたらい回しされるという出来事も起こっていました。

台湾では今年5月26日から、全ての人を対象に「検査キットで陽性であればオンライン診療で確定診断を下す」という制度が始まりました。そのため、「まずは検査キットで検査」というプロセスが一般的に広く伝わっている印象があります。一方、日本では「受診の目安」が医師会などから提唱されているのみで、オンライン診療についても対応に地域差があり、危険因子を持つ人に優先的に医療資源を配分することが難しい状況が生じかねないと不安を覚えました。

私の家族の場合、最初に発症した家族はかかりつけの病院がPCR検査を受け付けていたのでスムーズに検査を受けることができましたが、その2日後に発症したもう一人の家族(70代、重病治療中)と私については、その時がちょうどお盆期間中で対応している病院が少なかったこともあり、別の病院に問い合わせたところ、担当者から「今の医療状況はご存知ですか」と言われ、私の検査については断られました。重病治療中の家族については検査を受けることができたのですが、後で確認したところ、実施したのはPCR検査ではなく、抗原検査だったとわかりました。正直、わざわざ医療機関まで検査しに行き、かつ検査を渋られたにもかかわらず、PCR検査ではなく抗原検査だったことにショックを受けました。

日本では無症状者を対象にした無料PCR検査を主要駅や空港などで実施しています。一方で、本当に必要な有症状者への検査については、全ての人に実施できない状況が生じている上に有料としている現状には疑問しか沸きませんでした。(家族が受けた抗原検査では、病院への支払額は1200円ほどでした)

台湾のように「PCR検査を受けるなら先に検査キットで陽性を確認すること」「検査キットで陽性だったらオンライン診療で確定診断をもらえて、処方箋も出してもらえる」と明確にアナウンスされていれば、いざ発症した時に対応をしやすく、かつ本当に必要な人に医療を提供することがよりしやすいのではないかと思います。

信頼できる防疫物資を安価に供給

これも前述の検査キットにつながる部分ですが、台湾では家庭用抗原検査キットを入手しやすい環境が整えられています。「検査キットで陽性確認」→「オンライン診療」という流れを一般市民が実施しやすくなっている背景には、こういった防疫物資の供給に関してもきちんとした仕組みが整えられていることが一因だと気付きました。

日本で検査キットを購入しようとして驚いたのは、日本には「研究用」と書かれたの検査キットがあることでした。

台湾は「研究用」とわざわざ表示した検査キットはないと記憶していたので調べたところ、日本で「研究用」として市販されている検査キットは薬事承認されていないものだと知りました。

台湾では家庭用抗原検査キットは衛生福利部食品薬物管理署が承認したものしか輸入を許可されていないません。どうりで「研究用」「医療用」の区別がないわけです。

日本でも医療用抗原検査キットがすんなり手に入るならまだいいと思うのですが、近所のドラッグストアで売っていたのは研究用だけだったりと、信頼できる検査キットを手にしにくい環境にあるのではないかと感じました。また、研究用と医療用の違いを理解している人がどれだけいるのか?ということにも疑問符が付きます。

台湾では検査キットの販売に関し、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどでの自由販売と並行して、一部薬局での実名制販売も実施しています。実名制販売は、健保カードを提示する形で行い、1期につき1人1箱までと個数を限定していますが、安価(1箱5回分入り500元=約2250円)で購入できます。スーパーやコンビニでもきちんとした検査キットが1個200元前後で売られているので、実名制よりは高いものの、いつでも必要な時に手に入ります。台湾も感染者が急増し始めた今年4、5月ごろは検査キットの入手が一時的に難しくなっていたように記憶しているのですが、7月ごろには再び手に入りやすくなっていました。

台湾の薬局で実名制販売されている家庭用抗原検査キット。日本でも薬事承認されているロシュ製。

この環境は台湾に住んでいると普通だと思っていたのですが、日本で信頼できる検査キットが手に入りにくい状況を目の当たりにして、台湾では信頼性がない検査キットを掴まされにくく、さらに必要な時に購入できる体制が整備されていることは非常にありがたいものだと感じました。

防疫物資に関してもう一つ。日本では消毒用エタノールが高価であることにも驚きました。

台湾では「コロナ対策には75%アルコールを!」と政府から繰り返し情報発信されているので、「とりあえず消毒には75%アルコール!」という意識が市民に広く浸透しているように思います。そのため、スーパーでもコンビニでもドラックストアでも、どこでも75%アルコールが売ってあるし、1本100元(約450円)もしません。台湾煙酒が防疫期間の環境消毒専用で出している75%アルコールは1本(300ミリ)で40元(約180円)と非常に安価です。買い物のついでに気軽に買えます。

一方、日本でシンプルな消毒用エタノールを買おうとしたところ、ぱっと目につくところにあるのは除菌商品が多く、棚の一番下の列の目につきにくい場所でやっとアルコール度数75%以上の消毒用エタノールを発見しました。ですが、その値札を見て驚愕。1本(500ミリ)で1100円ほどとなっていました。これはさすがに高い。どおりで消毒用エタノールがあまり売ってないわけだと合点がいきました。(ちなみに1本1000円超は高いので諦め、後日、別のスーパーで1本100ミリのミニサイズを300円で買ったのでした。単価当たりだとこっちが高いのですが)

日本と台湾のコロナ対応を比べて気が付いたことは、台湾はコロナ関連の一つ一つの小さな措置がしっかりと噛みあうことで、コロナ政策を支えるしっかりとした土台が築かれているという点です。それにより、一本筋が通ったようなコロナ対応を行うことができているように感じます。日本の場合は、一つ一つのパーツがバラバラで、全体として結びついていないためにうまく機能していない印象を受けました。

日本と台湾では人口も国土の広さも、政治的な仕組みも異なるので、台湾にできても日本では難しい点はたくさんあると思います。

ただ、最初に挙げた情報周知の徹底など、日本でも頑張ればできる点は絶対にあるはずです。

日本でコロナ陽性になり、台湾にいた時には気付かなかった台湾のコロナ対策のすごさが分かったと同時に、日本ももっと頑張って!と思わずにはいられませんでした。

日本のコロナ対応、素晴らしいところ

日本と比較する形で台湾のコロナ対応の優秀さを紹介しましたが、「日本、すごい!」と思う点もあったので最後に紹介しておきます。

それは「充実した食料支援」と「窓口担当者の丁寧さ」です。

食料支援についても自治体によって異なるということなので、私の実家がある自治体という限定的な例にはなるのですが、家族全員陽性で自宅療養かつネットスーパーやデリバリーがほぼ使えないエリアということもあり、食料品を無償で提供してもらえました。

中身は、フリーズドライスープからレトルト食品、パスタ、ねり梅、ショートブレッド、ゼリーなど。1人1箱いただき、特にフリーズドライスープはとても美味しくて、療養中ものすごく重宝しました。

自治体から届いた食料支援キット。マルタイ棒ラーメンが入っていたのは福岡らしくてほっこりしました

私は台湾では陽性になっていないので台湾の療養キットについて実際のところはわからないのですが、報道などを見ると台湾の各県市の療養キットの内容は比較的簡素(かつ台北市や新北市ではすでに配布中止)であるようなので、日本の自治体がこんなに充実した食料支援をしてくれるのは、非常に素晴らしいと感じました。

また、私は日本での療養期間中、陽性者登録などの件で陽性者登録センターや保健所に連絡をすることが何回かあり、この時、窓口の方が皆さん丁寧に対応してくださったことも印象的でした。特に登録センターに関しては、センター側の不備に起因するやり取りということもあったのですが、深夜まで対応していただき、スタッフの方々の苦労が偲ばれました。

保健所や登録センター、医療機関など、市民と実際にやり取りをする機関の職員・スタッフはこんなに大変で頑張っているのにということを思うと、政府や行政がコロナ対応に関する仕組み改善をもっと積極的に行ってほしいと強く感じたのでした。

コメントを残す