6年越しの公開!『打噴嚏』久々の台湾大作青春映画

 台北映画祭で行われた台湾映画『打噴嚏』のワールドプレミアを見に行ってきました!!

 この作品も上映をすごく楽しみにしていた作品の一つです。

 というのも、当初は2014年に公開予定だったものの、最初はポスプロ作業の遅れで遅れ、続いて主演のクーチェンドン(柯震東)の大麻騒動によって完全にお蔵入りしていました。どうやらお蔵入りは版権の問題だったようなのですが、問題に片が付き、公開にこぎつけたようです。

 出資者の中には「柯耀宗」という名前がありますが、なんとこれはチェンドンの父!!昨年、同作のエグゼクティブプロデューサーを務めるアンジー・チャイ(柴智屏)の橋渡しによって同作品に力を貸すことが決まったそうです。息子の作品の公開を資金面で支えるなんてすごい!!

台湾映画では久々のエンタメ大作

 この作品はジウバーダオ(九把刀)の同名小説が原作です。ジウバーダオといえば、そう、『あの頃、君を追いかけた』です。主演も『あの頃~」のクー・チェンドン、そしてスターリズ(群星瑞智)が出資に加わっているとだけあって、見る前から次なる『あの頃~』の誕生を期待させます。ジウバーダオは今作では脚本を担当しています。

 クー・チェンドンの相手役を務めるのは、みんな大好きアリエル・リン(林依晨)。脇役にはワン・ダールー(王大陸)やヴァネス・ウー(呉建豪)など、おなじみの豪華キャストが顔を揃えました。

 ちなみに、大陸くんを一躍有名にした『私の少女時代』(我的少女時代)が台湾で公開されたのは2015年、打噴嚏の撮影は2013年とのことなので、この作品の大陸くんは有名になる前の姿です。見た時の楽しみに取っておいてほしいので詳細は控えますが、今作の大陸くんは今では絶対引き受けないであろう役どころなので、すごく新鮮です。そして若くてめちゃめちゃ可愛い!!これだけでも見る価値はあります!

あらすじ

 簡単にあらすじを紹介します。

 孤児院で暮らす王義智(クー・チェンドン)は、同じく施設で育つ優しくて正義感あふれる心心お姉ちゃん(アリエル・リン)に恋心を抱いていた。孤児院にいるのは、悪とヒーローの戦いによって親を失った子供たち。心心お姉ちゃんは「勇敢な人が好き」だと話し、義智はそんな人になることを幼いながらに誓うのだった。そして成長し、大人になった義智は、心心お姉ちゃんが好きな「勇敢な人」になるために、ある人のもとでトレーニングを積み、ボクシング界で「倒れないヒーロー」(不倒俠)の愛称を得て人気者になる。しかしながら、愛する心心お姉ちゃんにはすでに恋の相手がおり、恋人の存在によって悪の陰謀に巻き込まれていく――。

といったところです。

 ちなみにタイトルの「打噴嚏」とは「くしゃみ」のことであり、心心お姉ちゃんの特徴でもあります。そしてこのくしゃみがストーリーの鍵になります。最後まで見ると「なるほど~」とうなりました。

みどころ(1)青春恋愛映画✕ヒーロー

 この作品はただの青春恋愛映画ではありません。『あの頃~」ははっちゃけたザ青春といった雰囲気ですが、今作は「戦い、力強さ」といったキーワードがぴったり来る気がします。作品にはヒーローものの要素も多く加えられています。台湾映画ではヒーローものは珍しい気がします。ぱっと思いつくのはチェン・ボーリン(陳柏霖)の『変身』くらい。今作のヒーローはどちらかというとアメコミ風のヒーローです。ヒーロ周りのCGはけっこう凝っていて、「おおっ!」と思いました。アニメーションも一部取り入れられていて、遊び心を感じます。

みどころ(2)笑えるけどグッと来る

 わりとコメディー要素が強いので、基本的に笑えます。けれど、最後には、主人公と同じように観客も自分の人生を振り返ってしまうようなシーンもあり、胸に迫るものがありました。

みどころ(3)元気になれる

 作品全体として伝えているのは、「あきらめない」というメッセージだと思います。主人公の義智は、ボクシングの対戦でボコボコになってもけっして諦めず、何度でも立ち上がります。作品中の中でも、この姿勢は多くの人の支持を得て人気者になるのですが、映画の観客として見ている私も「がんばれ~」と声援を送りたくなるほどでした。

 上映後のあいさつで、クー・チェンドンは感極まって涙を流し、「この数年、本当に頑張ってきた。辛かった」ともらしていました。映画の撮影時には、その後に自分が停滞を余儀なくされるなんて思いもしてなかったと思います。映画が6年の時を経て公開されたことで、チェンドンがもがいてきたこの数年間と作品の中の「決してあきらめない」義智の姿が重なり、作品の伝えるメッセージがより力強いものになったんじゃないかと思います。少なくとも私は、チェンドンの涙を見てそう感じました。

2020年7月5日、中山堂で行われた『打噴嚏』ワールドプレミアの上映後あいさつで涙を流すチェンドン(左)
入り口でもらった『打噴嚏』のポストカードの裏には、チェンドンの直筆メッセージが。これだけでウルウルきます

ツッコミどころ

 エンタメ作品としてとても良くできた作品なので、見て絶対に損はない作品です。ただ一点、どうしてもツッコミたいところが…。

 それは、

クー・チェンドンもアリエルも10代後半から20代そこそこには絶対に見えない!!

という点です。

 2人が最初に出てくるシーンは、アリエルがもうすぐ大学に行くために孤児院から出ていくという場面なのですが、2人の見た目が大人すぎて、「はて彼らは何歳の役なんだ」と混乱してしまいました。そしたら、のちの会話で前述のような年齢設定なのだとわかり、さすがに無理があるでしょと思わずにはいられませんでした。見続けていくと、ストーリー的にそんなに年齢設定を感じさせないので気にならなくなっていったのですが。

 台湾の映画とかドラマのあるあるではあるんですが、役の年齢よりかなり年が上な役者を使うのってどうなんだろうと思います。一つの理由は若手の人材不足だと推測します。今作はおそらくクー・チェンドンありきの作品だったとうかがえるので文句を言ってもしょうがないんですけどね。

この作品が気になったという方は予告編をどうぞ。

台湾では7月15日に公開されます。

ネタバレ

次ページはネタバレを含む感想になるので、内容を知りたくないという方は見ないでください。

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