23年11〜12月の台湾映画4本 ざっくりレビュー 『小曉』『Old Fox』『車頂上的玄天上帝』『愛情城事』

11月の金馬映画祭から12月にかけて、注目の台湾映画が続々と上映、公開されました。今回はざっくりと一気にまとめてご紹介します。

紹介する作品は下記4本です。

小曉(Trouble Girl)

Old Fox(老狐狸)

車頂上的玄天上帝(Be With Me)

愛情城事(Tales of Taipei)

小曉(Trouble Girl)

『小曉』ポスター

先日の第60回金馬奨で主演のオードリー・リン(林品彤)が弱冠12歳で主演女優賞を受賞したことでも話題を呼んだ『小曉』。12月8日に一般公開されました。

ADHDの小学生の女の子・小曉と、その母親、そして小曉が通う私立学校の教師であり母親の不倫相手でもある若い男性の3人の間の人間模様を描く作品。アイビー・チェン(陳意涵)が母親役に初挑戦し、先生役は香港の俳優、劉俊謙が演じました。

金馬奨授賞式では「本当に12歳なのか」と疑いたくなるような落ち着きを見せていたオードリーちゃん。ですが、作品の中では感情の起伏が激しい女の子を演じ切っていて、その変貌ぶりに脱帽。めちゃくちゃ引き込まれました。

アイビー・チェンも、お金はあるけれども夫が滅多に家に帰ってこない寂しさ、なかなか思い通りにいかない子育てのストレスを不倫相手で紛らわそうとする母親の複雑な心境を細やかに感じさせてくれました。哀愁と色気を漂わせていてハマり役。

ちなみにオードリーちゃんは『アメリカン・ガール』(美國女孩)で妹役を演じていたのですが、姉役のケイトリン・ファン(方郁婷)と共に将来の活躍がとても楽しみです。二人共英語ができるので、世界的に活躍する可能性も十分あるんじゃないかなと密かに期待してます。

それと、作品中にフライドチキンを食べるシーンが出てくるのですが、めちゃくちゃ美味しそうで食べたくなります。友人いわく、撮影場所は国父紀念館そばの「蘇阿姨」では?とのことでしたが、真偽は不明。映画を見に行ったその足で蘇阿姨に行ってみましたが、30分ほど待った挙げ句、自分たちの番まであと数組となった時点で「フライドチキンは売り切れ」とアナウンスされ、諦めたのでした。

Old Fox(老狐狸)

『Old Fox』ポスター

こちらは金馬奨で最多4冠を獲得した作品。バブル絶頂の1989年を時代背景に、お金持ちの初老男性と、男性が所有するアパートで慎ましやかに暮らす父子2人の関係が描かれます。台湾映画ですが、どことなく台湾映画らしくない、独特の雰囲気をまとった作品でした。監督はシャオ・ヤーチュエン(蕭雅全)。

見どころは、その冷酷さで周りから「老狐狸」と呼ばれている初老男性と、「老狐狸」を相手に果敢にも「父親に家を売ってほしい」と何度も直談判に行く息子のやり取り。先ほど紹介したオードリーちゃん然り、今作で息子役を演じたバイ・ルンイン(白潤音)くんも存在感と迫力が半端ない。老狐狸を演じたのはベテラン俳優のアキオ・チェン(陳慕義)。ベテラン強面俳優を前に、全く引けを取らない迫力を出せるのはすごいの一言です。台湾芸能界は今、子役が熱い!!

父親役はリウ・グアンティン(劉冠廷)が演じています。また、日本から門脇麦も出演。裕福な奥さんの役で、日本人の設定ではないため、セリフ(中国語)は吹き替えでした。

車頂上的玄天上帝(Be With Me)

『車頂上的玄天上帝』ポスター

アリエル・リン(林依晨)&ヴィック・チョウ(周渝民)主演、脇役にはイーサン・ルアン(阮經天)やジョセフ・チャン(張孝全)といった、一昔前の台湾アイドルドラマ好きにはたまらない豪華キャストが顔を揃えた『車頂上的玄天上帝』。監督は、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督作品の美術監督を長く務めたホアン・ウェンイン(黄文英)です。ホアン監督の半自伝的作品とのことで、アリエルが演じたのもまた美術監督。父親の病気を機に故郷の嘉義に戻り、亡き祖父との思い出や祖父の人生に思いを馳せる過程で、“秘密の恋人”であるヴィック演じる建築家との恋愛に向き合い、自分の未来を見つめ直すという物語が描かれます。

とても興味深いのは、ヴィックが祖父と恋人の一人二役を演じている点。アリエルはおじいちゃん子だったという設定なのですが、個人的には「あんなにおじいちゃんそっくりな男のこと好きになるか?」と違和感を覚えてしまいました…。ただ、一昔前の時代を生きた祖父と現代のイケオジという全く違う2役に挑戦したヴィックの演技は見どころの一つ。ホアン監督のインタビューによると、ヴィックは台湾語がほとんどできないため、台湾語と日本語を話す祖父を演じるために台湾語と日本語の練習に勤しんでいたそう。

祖父の人生を回想するシーンには、日本統治時代の出来事も含まれます。台湾映画を見ていると、全然日本統治と関係なさそうな作品でも日本時代に関連するエピソードが登場する作品がちょくちょくあります。台湾、そして台湾に生きる人々の人生における日本との関わりを改めて感じたのでした。

愛情城事(Tales of Taipei)

2023台北金馬映画祭閉幕作『愛情城事』の上映ごイベント

台北を舞台に、10人の監督が10の物語を紡ぐ作品。監督を務めたのは『五月雪」のチャン・ジーアン(張吉安)や『弱くて強い女たち』(孤味)のシュー・チェンチエ(許承傑)、『君が最後の初恋』(當男人戀愛時)のイン・チェンハオ(殷振豪)など。キャストにはリー・シンジエ(李心潔)やカリーナ・ラム(林嘉欣)、イーサン・ルアン(阮經天)、サミー・チェン(鄭秀文)、リウ・グアンティン(劉冠廷)、ケイトリン・ファン(方郁婷)、グオ・シューヤオ(郭書瑤)、ベラント・チュウ(朱軒洋)など超豪華な面々が集結しました。そして、物語と物語をつなぐ役割として、ウーバイ(伍佰)も登場します。

豪華俳優が揃う中、特筆すべきは、歌手の9m88やジュリア・ウー(吳卓源)、ホアン・シュエン(YELLOW黃宣)、ロウ・ジュンシュオ(婁峻碩)の4人が放った存在感。特に9m88の演技はめちゃくちゃよかった。クラブの外で、ベラント・チュウに「久しぶり〜」と気さくに声をかけてきた陽キャな謎の女(ベラントは、声をかけてきた女性が誰だか全く思い出せず、人違いかも?と思いながらも話を合わせて一緒にコンビニの前で酒を飲むという展開)という役どころですが、天真爛漫さがめちゃくちゃキュートで、惹きつけられました。

以上、2023年11〜12月に上映、公開された4作品の紹介でした。個人的に、この4本の中でいちばん好きなのは『小曉』。登場人物の心の動きが繊細に描かれていて、見終わった後にいろいろ考えてみたくなる作品でした。

予告編

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