最近、「台湾政府は真面目に一生活者として暮らす外国人にも、もうちょっと優しくしてくれないかな」と思うことがある。
ノービザや到着ビザ、停留ビザで3月21日以前に入境した外国人を対象に、5回目の滞在延長措置が17日に発表された。
参考 外国人の滞在期限、5度目の延長 ノービザ入境者などが対象/台湾中央社フォーカス台湾私が抱いた正直な感想は、「優しすぎる」だ。
もちろん、コロナの影響で航空路線が運航されず、帰りたくても帰れない国の人はいると思う。でも、日本人に限って言うと、外国人に対する入境制限が施行された3月19日から今までに日本行きの飛行機が1便も飛んでなかったということはあり得ない。だから、本気で帰ろうと思っている人はとっくに帰っていると思う。
〈追記〉
投稿後に調べていたら、内政部移民署が17日、「3月21日以前に入境し、停留期間が180日を超え、かつ7月17日時点で合法に停留している外国人は、停留期限を一律で30日延長する」という通知を出していたことが分かりました。ちなみに内政部移民署の公式サイトを見てみると、上記の通知の後に、外交部が出した通知の内容が掲載されています。
外交部の17日付プレスリリースでは、自動延長の措置は「ノービザ、到着ビザ、停留ビザ」での入境者が対象で「停留日数が180日を超えてはならない」と明記されていますが、内政部の通知にはビザに関する記載はありません。
目次
私がなぜこの措置に否定的な意見を持っているかというと、この措置を利用して残っている人の中には、不法就労をしている人が一部含まれているからだ。
台湾にはいわゆる「ビザラン」(ノービザで入って、期間が切れる頃に一度出境してすぐまた台湾に戻ってくるという行為)をしながら生活している外国人がいる。こうした生活をしている人の中には、台湾でお金を稼ぐ行為をしている人もいる。ノービザ入境者には、台湾での就労は認められていない。
参考 免簽證外交部領事事務所除觀光、探親、社會訪問、商務、參展、考察、國際交流等無須申請許可之活動外,以免簽證方式入境者倘擬從事依國內其他機關法令須經許可之活動,仍須取得許可;倘擬從事傳教弘法等須經資格審查之活動,請事先向中華民國駐外館處申請適當之來臺簽證。
外交部領事事務所
より正確に言うならば、ノービザ入境者に認められているのは「観光、親族訪問、社会的訪問、ビジネス、展示会参加、視察、国際交流などの許可申請が不要な活動」のみであり、「国内のその他の機関の法令により許可が必要な活動に従事しようとする場合には許可を取得する必要がある」。外国人が台湾で就労するには就労許可が必要だ。
以前、台湾に数年間住んでいて仕事もしているのに、居留証の手続き方法について知らないという日本人女性に出会ったことがある。
彼女は通訳の仕事をしていると言っていたのだが、「日本人は中国語が分からないから、適当でいいんですよ」と平気な顔で発言していて神経を疑った。
私は翻訳の仕事をしている。だから、一つの言語を別の言語に変換することの難しさ、そして誤訳の怖さを身にしみて理解している。だから誤訳にならないように細心の注意を払う。翻訳の場合は、翻訳をしながら関連資料を探すことができるが、通訳の場合はそれが難しいため、プロの通訳の方は事前に入念な準備をしていると聞く。私はその場で訳すのは苦手なため、イベントなどで非常に上手な通訳さんに遭遇すると、心から尊敬する。
話がやや脇道にそれたが、何が言いたいかと言うと、不法就労をしている人の中には全員が全員とはいわないが、職業に対するリスペクトが欠けている人が一部いて、それは業界全体に悪影響を与えかねないという点だ。
下記の記事でも書いたが、私は台湾政府はお客様の外国人には優しいけれど、生活者である外国人はあまり優しくないと感じている。
台湾はまさにムラ社会だ~振興三倍券を巡って~【台湾の外国人受け入れ政策課題】例えば以前、高鐵で外国人観光客向けの買一送一キャンペーンを実施した際は、明確に「居留証所持者は対象外」とされた。
参考 訪台外国人客対象 台湾新幹線、中南部行き乗車券を2人一緒で1人無料に中央社フォーカス台湾はたまた、昨年実施された国内向けの旅行振興キャンペーンでは、「国民限定」と条件がつけられた。
参考 擴大國旅冬遊住宿優惠活動交通部また、今回の振興券だって、外国人は「台湾人の配偶者だけ」と限定された。
私は真面目に納税して、台湾企業で働き、台湾社会にある程度の貢献はしていると思っているのだが、こういう優遇措置の対象からはことあるごとく排除される。
逆に、ノービザで入って台湾で生活している人は、上記の高鉄のキャンペーンも対象になるし、働いていても不法就労だから納税しているはずもない。こう考えると、なんだかビザランの人のほうが得しているのではないかと思ってしまう。(マスクに関しては、居留証を持っている外国人も対象にしてくれたからそれはありがたかった。逆にビザランの人は困ったと思う)
人道支援として、外国人に猶予を与えることは良いことだとは思うが、それだったら、台湾に居住している外国人にももっと優しくしてほしいと思わずにはいられない。
優遇措置自体は金額自体は大したものではないから、別に優遇してくれなくったって、旅行も行くし、買い物もする。金額の問題ではなく、居留する外国人だけを除外する事実が、心境として理不尽だと思うのだ。
選挙権をくれなどとは決して言わない。でも、経済活動に関しては外国人も国民と同じように、もしくはそれ以上にするし、納税だって、就労の在留事由で滞在許可を得ている外国人の中には高給をもらっている人も少なくないから、税金面での貢献は大きいはずだ(私自身はそんなに給料をもらっていないから、威張れるほど納税してはいないことを付け加えておく)。
日本では最近、行政院政務委員(無任所閣僚)のオードリー・タン(唐鳳)氏が台湾の「多様性」の象徴的存在として語れることが多いように見受けられる。
確かに、タン氏のような人物を政府に迎え入れることは、現在の日本では考えにくいため、すごいことだと思う。
だが、私は、タン氏を受け入れたことだけで台湾に「多様性がある」と言えるかというと、そうではないのではないかと考える。
「多様性」を辞書で調べてみると、「いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと」(goo辞書)と書いてある。また、台湾の多様性について語る様々な報道を読むと、基本的るは「社会の多様性」、カタカナ語で言えば「ダイバーシティー」の意味で使われていることが多いことも分かる。
ダイバーシティーについて調べてみると、三省堂辞書ウェブ編集部のコラムで、こんな説明があった。
さてダイバーシティーという言葉は「人間の多様性」を表現する場面でよく登場します。具体的には性別・年齢・国籍・人種・宗教・性的指向・障害の有無などの多様性のことを指すのです。
続10分でわかるカタカナ語第19回ダイバーシティー/三省堂WORD-WISE WEB
ダイバーシティーを考える際には、外国人についても考える必要がある。
外国人の線引きをその時々で変えたり、納税者として暮らす居住者を経済優遇措置から排除したりする社会は、真に多様性がある社会と言えるのだろうか。疑問を投げかけたい。
余談だが、蔡英文総統は6月、人材に関するイベントで、高度外国人人材の誘致に向けた規制緩和をする方針を示した。
参考 蔡総統、台湾を「人材センター」に 外国人材誘致やバイリンガル教育に意欲中央社フォーカス台湾私が思うのは、いくら優秀な人材を海外から呼び寄せたところで、外国人を排除するような政策を取り続けているのであれば、つなぎ留めは難しいのではないか。政府が欲しがるような超優秀な人材であれば、他の国からも引く手あまただろうし、なおさらだ。外国人人材の誘致に力を入れるのであれば、外国人の居住面での待遇についても目を向けてほしいと心から願う。
※アイキャッチ画像は昨年10月に花蓮・清水断崖で撮影した写真です。記事の内容とは無関係です。
同感です。
外国人に対して冷たいと言われる日本は、正規の手続きで滞在している外国人には日本人と同じ福利厚生が受けられます。
多様性社会と言われる台湾が在台外国人を排除する。
どうして世間の評価が現実と違ってしまうのでしょうか?
コメントありがとうございます。
やっぱり情報の発信の仕方、され方が影響しているのではないかと思います。
日本向けに発信される情報は、台湾のいい面にフォーカスした情報が多いと感じます。
初めまして♪
まさにkuroqieさんが私の言いたいことを全部書いてくださっています~!!!
ちゃんと正規の手続きを得て労働ビザを取り、真面目に納税しているのに、なぜ?って思いました。
(私も威張れるほどの納税はしていないのですが・・・。)
思いの外、日本は外国人に優しく、給付金をきちんと配布している(はず)・・・
外国人には寛容な対応をしているはずの台湾政府が、なぜそんな区切りを入れたのか。
ちょっとビックリでした。なんだか悲しい(:_;)。
初めまして!
そう言っていただき、嬉しいです。
そうなんですよ。日本は今回のコロナに関しては、外国人も給付対象なんですよね。
しかも、日本の場合は「生活に困窮している人のため」という名目があると思いますが、
台湾の場合は「経済活性化」が目的で、額も大したことないんだからなおさら、外国人を「婚姻関係」で分けることがおかしいと感じました。
悲しいですよね。
私は最近ブログ村に登録させてもらったのですが、いつも上位にいらっしゃるメイフェさんのブログを「すごいな~」と思いながら拝見していました。
今後とも仲良くしていただけたらうれしいです。