台湾生活を辛くしないために〜在台9年の私の4つの心構え【留学・仕事で居住する人向け】

 台湾は、海外の中では日本人が暮らしやすい場所だと思います。日本人に親切な人が多く、日本食も比較的簡単に手に入ります。ですが、やはり観光で来るのと実際に住んでみるのでは違うもの。辛いこと、困ること、たくさんあります。私が台北の大学院に通っていたころは、卒業せずに途中で帰ってしまう日本人も少なからずいたし、Twitterでも、台湾生活の苦悩をもらす投稿を目にします。

 私は当初、大学院卒業後は日本で就職する予定だったのですが、縁があって台湾企業に入り、現在7年目です。台湾生活は今年で満10年に突入します。不満は今でもあるし、もちろん辛いこともありましたが、「日本に本帰国したい」と思うようなことはなく、比較的心地よく過ごすことができています。

 というわけで、どうすれば台湾生活を乗り越えていけるか。私(Kuroqie)が9年間の台湾生活の中で身につけた、自分を辛くしないための心構えをご紹介します。これから留学や仕事で台湾に住む方、台湾生活で辛い思いをしている方に参考にしていただければ嬉しいです。

注意
この記事は留学・仕事で台湾に住む私の経験を基にしています。国際結婚や帯同などで台湾に居住されている方とは事情が違う場合がありますので、ご了承ください。

無理はしない。できないことはしない。できることをする。

 台湾は外国です。日本とは言語も文化も慣習も何から何まで違います。だから、日本では自分でできていたことでも、台湾だと難しいことはたくさんあります。最初から中国語がペラペラな状態で来る人はおそらく多くはなく、訪台したての頃は言語面でのストレスも大きいです。

kuroqie
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私もそうでした。

<私の体験談>

 私は大学時代に第3外国語で中国語を専攻し、留学する1年ほど前から中国語のマンツーマンレッスンを受け、HSK5級を取得していたのですが、大学院の最初のグループワークで、教授や同級生が何を言っているのか全くわからず、打ちのめされました。同級生はいい人ばかりだったので、全く分からない私をサポートしてくれたのですが、完全に足手まといになっていることに心苦しさを感じていました。

 中国語が分からない上に、大学院での専攻は、大学の専攻と全く違っていたため、授業内容は本当にちんぷんかんぷん。中国語の書籍を読んでも全く頭に入ってきません。でも私の学科は学生のプレゼンで授業を進めていく形式が主だったので、自分の発表の番は必ずやってくるし、私の番の日にきちんとプレゼンができないと授業になりません。そこでもう、内容を中国語で理解することは諦め、授業で使う書籍の日本語版を探して日本から取り寄せて、日本語で理解することにしました。するとやはり理解度が飛躍的に向上し、なんとなく中国語でもわかるように次第になっていきました。

 お荷物さんな日々はそれからもしばらくは続いたのですが、1学期、あるいは1年ほど経ったころでしょうか。最初よりも中国語がましになると、「日本人」ということで先生から簡単なお手伝いを頼まれたり、日本人ならではの視点での発表をほめられたりするようになりました。発表に関しては実を言うと、私にとって資料探しは日本語のほうが断然やりやすく、また、台湾の事情もよくわからないために日本の例を取り上げていたのですが、台湾の人にとっては探したりするのが難しいので、結果的に良かったのでした(笑)。

 また、当初は2年での卒業を予定していたのですが、入学早々に無理だと気付き、3年計画に変更。1学期目は張り切って単位を入れすぎたので、2学期は9単位(3授業)に抑えることにしました。これによって気持ちに余裕も生まれました。

 今振り返ってみると、大学院生活は「無理しすぎず」「できることをやる」という気持ちが持てたからこそ乗り切れたと思います。

 現在の仕事でも、やりたいことは率先してやるけど、やりたくないことはなるべくやらないですむようにしています(これ、会社の人に見られたらまずい)。 でも、これができるかできないかは職場の状況にもよるかもしれないのでおすすめはしませんが、無理しすぎないことは大事だと思います。

 台湾に来たからって無理に中国語を勉強しなくてもいいし、無理に台湾人の友達をつくらなくてもいい。目標は高く設定しすぎない。心健やかな生活を第一に暮らしていくと、意外となんとかなります。

気にしすぎない。開き直ろう。

 上に挙げた大学院での経験談について、もしかしたら人によっては「お荷物になるのは耐えられない」と感じてそこがストレスになる人もいるかもしれません。

 差し出がましいですが、私の経験上、「お荷物になるのが耐えられない」と感じてそこから抜け出せない人は、台湾生活に向いてないように思います。「中国語ができないから」といって卑屈になったり、手助けをされるのを快く思わなかったりする人もそうです。

<実例>

 私の友人から聞いた例を紹介します。

 友人が通う大学にある時、日本人留学生が来ました。友人は教授から頼まれたのもあり、手助けをしようとしましたが、この留学生は支援を断ります。そして、台湾人教授との関係をつなげようとする誘いまでも「それ、意味あるんですか」と突っぱねました。こういう態度だからほかの学生からの評判も良くなく、結局予定していた期間に学業を修了できずに日本に戻ることになったそうです。

 話を聞く限りでは、この留学生は無駄にプライドが高いために、台湾生活を生き残れなかったのだと思います。

 「自分は外国人なんだからできなくてしょうがない」「できないんだから頼れる人は頼ろう」くらいの気持ちで生きていくほうが、楽に過ごせると私は思います。

kuroqie
kuroqie

私は今でも「役に立たなくてごめん」と思うことが多々ありますが、その時は好意に甘え、私が役立てる時に恩返しできればいいかと思うようにしています。

 

 「気にしすぎない」はもう一つ、外的要素についても言えます。

 路地できちんと端を歩いてるのに自動車にクラクションを鳴らされたり、レジで割り込みされたりと、「チッ」と思うことは台湾生活の中で毎日のようにあります。

 私の場合、クラクションを鳴らされた時は「このドヘタな運転手め」と心の中で悪態をつき、レジで割り込みされた場合は「待ち時間がちょっと伸びるだけだからまあいいや」とあきらめモードを発動させます。

 私の場合は理不尽な出来事には心の中で悪態をつくか、からかうか、あきらめるかで、「チッ」という気持ちを浄化させています。これは台湾に来てから知らず知らずにそうなっていたのですが、不快な出来事によって生じた負の感情をその都度分解して溜めないようにしていくことは、台湾で精神の安定を保つために必要不可欠だと感じます。

 逆に、何か自分でできたことがあったり、褒められたりすると、「私、天才!」と自分を盛大に褒めるようにしています。口に出すとただの自信過剰な嫌なやつになってしまうので、あくまでも心の中でだけです。

体調の異変を少しでも感じたら病院へ。

 台湾で働く上では、健康が何より大事。幸い、台湾は国民健康保険制度のおかげで医療機関を受診する際の負担が少ないので、私は身体に異変を感じたら、なるべくすぐに病院に行くことにしています。「なにか変」と思ってすぐ受診することで、意外な病気が見つかることもあります。

<私の経験談>

 台湾で働き始めてからしばらくした頃。

 デスクで作業をしていたら、いままで経験したことのない強いめまいに突然襲われました。「これはやばいかも」と思って、その日のうちに大学病院を受診したところ、何が原因と診断されたかは覚えてないのですが、精神安定剤を処方されました。

 薬を出された時は「え?」と思ったのですが、薬を飲むとたしかに気持ちが軽くなり、自分が実はストレスを抱えていたことに気が付きました。幸い軽症だったようで、それからはめまいもしないし、薬が必要と感じることもありませんでした。

 もしあの時自分の異変に気が付かなかったら悪化していた可能性もなきにしもあらずなので、行ってよかったと心から思います。

 こういう例もあるので、海外生活だからこそ、「ちょっと変」と思ったら医療機関を受診することをおすすめします。

孤立しないようにしよう。

 私は仕事などで不満を感じることも多いのですが、その度に、話を聞いてくれる人の存在をありがたく感じます。その相手は友人だったり、同僚だったり、先輩だったり。「この人になら話せる」という人がいると、心の負担が減らせるように感じます。

 また、私は台湾人一家(赤の他人、友人だったわけでもありません)とルームシェア(間借りとも言う)生活をしているのですが、ルームシェアをしていて良かったと思うことが多々あります。

 「家のこまごまとしたことをしてくれる」「一人暮らしより安全」という面はもちろんですが、最近感じたのは「一人じゃない」ということの安心感

 先日、台北でここ数年では一番揺れが大きい地震があったのですが、その際、ルームメイトと「逃げる?どうする?」と相談し合っていました。結局今回は揺れはそんなに長く続かず、被害が出るような地震ではなかったのでよかったのですが、もし一人暮らしの家で大地震が起こったら、逃げるか逃げないかの判断を一人でしないといけないし、避難したところで、知っている人がいないのはすごく不安です。近所に知り合いが一人もいない状態で避難するのと、知っている人がいるのでは、安心感が全く違います。

 一人で台湾にいるからこそ、周りの人とのつながりは日本にいる時以上に大切だと感じます。無理に人付き合いをする必要はないと思います。実際、私は友人がものすごく少ないです。だからこそ、職場だったり、ルームシェアだったりと、強制的に自分を常に誰か人がいる場所に置くことは大事かなと感じています。

以上、思いつく限りで4点を挙げてみました。

 これはあくまでも私が台湾在住9年の経験を振り返って感じた、台湾生活で重要だと思う心構えです。

 人によって生活する環境は異なるため、全ての人に有用かは分かりません。

 ですが、もし誰かの参考になれば幸いです。

最後に

 今回、なぜこんなことを書こうかと思ったかというと、昨年末に日本人留学生が命を絶つ出来事があったからです。この留学生がなぜその道を選んだのか私にはわかりません。もしかしたら、台湾生活の辛さとは全く別のところに原因はあったのかもしれません。

 ただ、「台湾生活、辛い」と感じる人は必ずいるはずなので、「私はこうやって気持ちを保っているよ」とお伝えすることで、もしかしたら誰かの役に立てるかなと思って書いてみました。

 もし、読者の方で「私はこういう心構えで生活しています」というのがもしあれば、コメントで教えていただけると嬉しいです。

1 COMMENT

清野美佐

私は、「日本より台湾の方が数段マシ」と思い、楽しく暮らしています。
例えば、詮索好きに出会った時に、日本では、逃げ切るのが難しい場面が有ります。でも、台湾なら「聽不懂」または、わざとちぐはぐな返事をしてはぐらかして逃げることも容易です。
何より、コロナ禍で医療者の私の家にいたずらや悪事を働いた日本人とは、二度と一緒に暮らしたくない、と思っていますので…
最後の孤立しない…については、私は、地震の時などは、むしろ自分一人で判断したいタイプです。

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