いろんな意見があって、それでいい【台湾における日本人社会の人間関係】

 台湾に住む日本人が一度は考えたことがあるであろう「日本人同士の人間関係」問題。この記事では、SNSが介在する人間関係も含めて、私の考えをまとめています。当事者として人間関係について考えている方、はたまた在台日本人の人間関係に興味がある方に参考にしていただければ幸いです。

狭い日本人社会

 台湾の日本人社会は狭い。とにかく狭い。元々、リアルでも狭いが、SNSによってさらに狭くなっている。

 Twitterでたまたま「いいね」を押した相手が友人の同僚だったり、SNSで「あんまり好きじゃないかも」と思っていた人に知り合いを通じてばったり会ってしまったりというのは、私が最近実際に経験したエピソードだ。もし在台日本人の誰かに会いたい場合、知人を1人、もしくは2人介せば、かなりの確率で辿り着けるのではないかと思う。

 先にお伝えしておくと、私は在台日本人との交友関係は広くない。仕事で会ったりやり取りしたりする人はそれなりにいるが、プライベートで会う人は両手で十分数えられるくらい。いや、もしかしたら片手で数えられるほどかもしれない。一時期は積極的に日本人同士の飲み会に参加していた時期もあったが、人見知りということもあって最近はぱったりだ。

 私の場合は、日常的に付き合いのある日本人は数が少ない上に懐が深い人ばかりであるため、関係に悩むことはほぼないが、ここにSNSが絡むことで悩みが生じることがある。

 SNSは匿名でやっている人が大半だと思うが、台湾界隈の場合、身バレするのは容易だ。実際に、匿名でやっている私のこのブログは本格稼働してから2ヵ月も経っていないが、早速知人から「このブログやってる?」という問い合わせが入った。(私の場合はブログにプロフィールを書いているため、経歴を知っている人が見れば私だと分かることは承知の上ではある。)

 SNSで実際の知り合いとつながっていると、交流が生まれて楽しい一方で、「この人はこういう意見なんだな」とある事柄に対するその人の考え方を知りたくもないのに知ってしまうこともある。自分と同意見であればいいが、そうでない場合はもやもやした思いを感じてしまう。

 私は、「それは違うんじゃないか」と思ったことについては自分の意見を主張したいタイプの人間だから、批判的な意見を書いた過去記事を見てくださった人の中には、もしかしたら実際の知人もいて、気分を害してしまった可能性もあると思う。

 でも、私はそれでも仕方ないと思う。

コミュニティー内での人間関係

 私は、あるコミュニティー内の人間同士の付き合いには下記の5つがあると考える。

  1.  人間として好きではなく、本能的に避けたくなる人
  2.  人間としてそんなに好きではないけれど、考え方は理解できる人
  3.  好きでも嫌いでもない、どうでもいい人
  4.  人間としては好きだけど、一部で意見の相違がある人
  5.  人間として好きで、意見も合う人

 <1>の人とはごくたまに出会うことがある。日本人同士、普通に仲良くすればいいのに、なぜか他人を蹴落とそうとする人。

 以前、仕事関係の集いで知り合った同業他社の女性Aさん。言動から非友好的態度を薄々感じ取っていたところ、二人だけになった際に突然、私にとっては理不尽な、強い非難の言葉を浴びせられた。その後、別の機会で会った際にも、やはりマウンティングされているような言動をされ、「やっぱり苦手だ、この人」だと思った。

 信頼できる友人にこの出来事を話すと、

「それはkuroqieちゃんのほうが中国語が上手で可愛くて、みんなから好かれてたから、ひがんでるんだよ」

 という言葉をもらった。友人の言葉の内容が真実かどうかは別として、私はこの言葉に励まされた。

 確かに、「確実に自分より劣っている」(言い方は悪いが)と思っている人間に突っかかる人ってそうそういない。「ひがむ」=「相手のほうがどこか優れたところ、恵まれたところがある」と本人が感じている証拠だ。

 だからそれから私はその人に対しては、「ああ、私のほうが中国語が上手で可愛くて好かれてるからひがまれてるんだな」と思うことにしている。(余談だが、この考え方は自分のメンタルを守るのに効果絶大なので、マウンティングされて嫌な思いをしている方はぜひ試してほしい。)

 <2>と<3>の人は普通に話はできるから、この区分の人との人間関係に困ることはあまり無いように思う。

 <5>の人は、すごく貴重な友人だ。

人間としては好きだけど、意見が違うことがある

 前置きが長くなったが、この<4>が、この記事で私が最も伝えたいことだ。

 過去記事「台湾はまさにムラ社会だ」でも書いたが、台湾に住む日本人は、駐在員、駐在員の妻・子供、台湾人の配偶者、現地採用者、企業家、留学生、ワーホリ者、ビザラン者―など、属性は様々であり、暮らす環境も違う。したがって、そこから見えてくるものも異なる。

 だから、「この人は好きだけど、考え方、意見は違う部分もあるな」と思うのは、いってみれば仕方がないことだと思う。私は、「この人とはこの部分では意見が違うな」と思っても、それが「人間として好き」だと思う人であれば仲良くしていきたい。むしろ、「この部分では意見が違う」ということを互いに理解した上で良好な関係を築けるのが最良だと感じる。

 私は、相手と仲良くしたいからといって、本心はそう思っていないけれど表面的に迎合するということはしなくてもいいと思う(会社の上司とか、そうせざるを得ない場合も大人だからもちろんあるけれど)。逆に、その場で取り繕ったとして、後で陰で反論し、それが周り回って相手の耳に入ったら、そっちのほうが心証が悪い。狭い日本人社会、陰口がどこで本人の耳に入るかは本当に分からない。

 さらに言えば、自分と意見が違うからといって遠ざけたり、他人の意見を聞き入れずに排除しようとする人は、仲良くなろうとしなくていい。

 でも、私が「人間として好きだな」「仲良くしたいな」と思う人は、ちょっと意見が違うからと言って排除する人ではないと信じている。

いろんな意見があって、それでいい

 タイトルどおり、私は「いろんな意見があって、それでいい」と思う。「仲のいいあの人がこういう意見だから、私は本当はそうは思わないけどだまっておこう」とするなんてすごく窮屈。ゆるい台湾社会にいるからこそ、日本人同士も「あいつは自分と違う意見だから敵だ」とみなすのではなく、「あなたはそういう意見なのね。でもわたしはこう思うの」ということをフラットに、軽やかに表現できる空気が醸成されるといいなと思う。

 特にツイッターでは、相手の顔が見えない分、異なる意見を持つ人に強い物言いをしたり、マウントを取って言い負かそうとしたりする風潮が生まれやすい。もし、多くの人が自分の意見をフラットに表現できるようになれば、こういった風潮も軽減されるのではないかと私は思う。

 「批判」は「悪口」とは全く違う。「悪口」は相手の人格を悪く言うもので、人身攻撃の側面があるが、「批判」は行動や意見に対して根拠をまじえて反論するものであり、人格を否定するものでは全くない。

 だからもし、私の批判の対象に当てはまる人がいたら、「人格を否定された」と思わないでほしい。あなた個人を批判しているわけでは決してないのだから。また、そういう誤解を与えないように、情報発信する上では「悪口」にならないよう気をつけているつもりだ。このブログを見てくださる人には、「ああ、この人はこういう意見を持っているんだな」くらいに思っていただければ嬉しい。

<追記>誹謗中傷をする人への心構え

(2020年8月7日追記)

 SNSの誹謗中傷について考えていた時、HYDEさんのインタビューの内容に共感したため、この記事に追記しておく。

 特に心に響いたのはこのコメント。

誰かを非難してる人がいたとして。非難されてる人も悪いのかもしれないけど、それを汚い言葉で罵っていたりすると、かなりカッコ悪いヤツだと思う。

「誹謗中傷、見ていて耐えられない」大物ミュージシャンが“悪いアンチ”に苦言
(BuzzFeed)

  ツイッターでもたまに見かける、口調が強くて読むと心がキュッとなる投稿。特に最近気になったのは下記のような内容の投稿。

  • 自分の意見ははっきり書かないのに、誰かを強い言葉で非難する
  • 自分にその能力があると証明もせずに、一生懸命やっているであろう誰かの行動・作品を上から目線でバカにする
  • 根拠を示さずに「間違い」と断言して批判する

 こういった投稿は、対象を明確にしないこともあるから、「自分のことかも?」と思って不特定多数を傷つけることもある。

 私はネット有名人とリアルで付き合いがあった経験から、ネット上で斜に構えて粋がっている人は、実際は中身が空っぽな人だと思っている。たとえ学歴が高くても、お金持ちでも。

 私はもし、こういう不愉快な投稿をツイッターで見かけたら、その人を即ミュートする。見たくないから。その人をフォローしていなくても、自分がフォローしている人がその人に「いいね」を押すとタイムラインに現れてしまうから、全く迷惑な機能だと思う。もちろん、面白い投稿を知れることもあるのだけれど。

 無意識に不特定多数を誹謗中傷をしている人からすると、こういう記事を書く私も「空っぽ」「バカだ」と思われるのかも知れないけど、少なくともHYDEさんから「カッコ悪い」とは言われない。それだけで十分だ。

 誹謗中傷は自分に矛先が向かっていないとしても、見ていて気分が良いものではない。でも、誰かに誹謗中傷をやめさせることは難しい。だから、偶然にもそういう発言を見た時には、自分で自分の心のバランスを取る必要がある。その上で、HYDEさんの上記の発言はすごく心に刺さった。「こういう捉え方もあるのか」と。だから私は不愉快な発言に出くわしてしまったら、その人を「カッコ悪い」と思うことで心のバランスを保つようにしたい。

関連記事

自分宛に在台日本人から攻撃的なリプライが寄せられた時の思いをまとめた記事です。(2021年4月16日追記)

自分が大切にする価値観とは?

※アイキャッチ画像はGordon JohnsonによるPixabayからの画像をお借りしています。

10 COMMENTS

おっさん

私は台湾にいる日本人とは余り接点がありません。敢えて言えばうちの会社にアルバイトに来て下さる方くらいでしょうか。もう若くもないし、イケメンでもないし、金持っているわけでもないし、そのくらい身を慎んでいてちょうどいいくらいなのだと思います。

マウンティングのお話を出されていましたが、狭い世界の方が職歴、学歴などのヒエラルキーに敏感なのは確かだと思います。私も嫌なことをネットで度々言われ、結局ブログのコメント欄を閉鎖することを選択しました。

これを打破するのは自分がその狭い世界の枠を破るしかないと思います。私は起業がそれを打破する良い機会になりました。

起業後、日本の中小企業のオヤジさんたちと飲んだりすることも増えましたが、みんな仕事が大好きでそれそれの業界の話を実に面白く話してくれます。ヨーロッパとかに縁がある方もいて、ドイツとかフランスだけでなく、そこに挟まれたベネルクス三国やスイスの話などもし、台湾との比較で結構ヒントになりました。

ネットだとシンガポールで働かれている日本人の方がちゃんとした一次資料を調べ、シンガポールの様々な事象を紹介するブログをよく見ています。すごすぎて、ただ見ているだけですがとても緻密な展開で毎回見ていて楽しみです。

台湾でもそういう思考して掛かれているブログを見つけ喜んでおります。一定の長さの文章を書くのはとても大変なことだと思いますが、私のように興味持ってみている人も少なからずいらっしゃると思うので、ぜひ無理ない範囲で書き続けていただければと願っております。

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kuroqie

いつもコメントありがとうございます。

やっぱり嫌なこと言われることはありますよね。
わたしの周りの人は基本的にいい人なので、枠を破ろうとまでは思わないのですが、そういう心構えも大事ですよね。
勉強になります。

>ネットだとシンガポールで働かれている日本人の方がちゃんとした一次資料を調べ、シンガポールの様々な事象を紹介するブログをよく見ています。すごすぎて、ただ見ているだけですがとても緻密な展開で毎回見ていて楽しみです。

このブログ、すごく気になります!さきほど自分でも少し検索してみたのですが、シンガポール在住日本人のブログが多すぎて見つけられませんでした…。
もし差し支えなければ、タイトルかURLを教えていただけますでしょうか。ブログの参考にしたいです。

>台湾でもそういう思考して掛かれているブログを見つけ喜んでおります。一定の長さの文章を書くのはとても大変なことだと思いますが、私のように興味持ってみている人も少なからずいらっしゃると思うので、ぜひ無理ない範囲で書き続けていただければと願っております。

そう言っていただけて、すごくすごく嬉しいです!!自分の意見を表明する文章は、一回思いつくとスラスラ言葉が出てくるので、実はそんなに大変ではありません(笑)。最近更新が滞っていたのは、グーグルアドセンスの承認に向けた調整に時間を取られていたからです…。まだ合格していないので、しばらくは抑えめの更新頻度になると思いますが、引き続き見ていただけるとありがたいです。どうぞよろしくおねがいします。

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kuroqie

情報提供、ありがとうございます!

さっそく見に行ってきました!
「すごすぎて」とおっしゃっていた意味がよくわかりました(笑)
本当に情報が密で、かつ、早い!!きちんと最新情報をアップされていてすごすぎます。

これはちょっと、私には真似できないと思いました。

でも私は私なりに、頑張っていこうと思います!

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おっさん

私が見習いたいと思うのは、更新頻度ではなく、単純な感想文にしないということ、感覚で書かないということです。

例えば・・・できる限り、原文のニュースなど一次ソースもチェックし、ファクトチェックする。外省人=反日・親中、本省人=親日・反中という良く言われることも事実を自分の眼である程度納得いくまで確認する。外国人の労働など重要な事項は、電話などで監督機関など当事者に確認する・・・などですね。

意外に大学でもレポートをしっかり描くチャンスが無かったり、卒業論文を課さない大学もあるようで、合理的に仮説を立てて、妥当な方法で検証し、結果をちゃんと組み合わせて正しく結論を導き出し、さらに文章にまとめる・・・という力は継続して訓練しないと身につかないように思います。

だからこそ、文章そのものの良さが伝わるブログは面白く感じます。

kuroqie

原文のニュース、一次ソースを確認するというのは、私はこのブログで気をつけたいと思っている点の一つです。
確認しないと、けっこう勘違いしていることもありますからね。
匿名ブログである以上、根拠がないと信頼性が生まれにくいかなと思います。

意見が違う人にも「一理あるかな」と思ってもらえるブログを目指したいです!

メイフェ

日本で暮らしていても人間関係はなにかしら関わらなければならないですが
海外の人間関係というのはまた特別なところもあります。
特に日本人同士というのはどこか微妙。笑。
kuroqieさんのおっしゃるように色々な立場の方がいるので時にお付き合いが単純でないことも。

私も今、台湾での日本人とのお付き合いは片手ぐらいなので(笑)
駐在員妻をしていた時と比べたらなんともシンプルですが、色々ごちゃごちゃ(!)あったのも
今振り返るといい思い出です。
最初は、なんだかな~と思っていたママ友が実はいま、仲良く続いていたりして。笑。

いろんな意見があって、それでいい・・・本当にそう思います。

アイキャッチの画像、これ、すごく面白いですね!

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kuroqie

コメントありがとうございます。

メイフェさんは以前は駐在員妻をされてたんですね!駐妻さんの関係は難しいと聞いたことがあります。
私は身近にいないので、よくわからないのですが。
最初は微妙だったママ友と今は仲がいいというの、すごく面白いですね!

日本人社会は狭いから余計他人のことが気になるのかもしれませんね。
完全にゴーイングマイウェイでいければいいのかもしれませんが、そうはいかないこともあるというのが難しいです。

アイキャッチの画像は、Pixabayで見て、「今回の記事にぴったり!」と思ってお借りしました(^o^)

全く別の話ですが、先日メイフェさんがブログで紹介されていたカバランのジントニック、私も飲みました!
私は同時発売されたハイボールのほうがカバランっぽくて好きでした。
でも、カバランもジンを出していたのは初めて知りました!購入後のレポートを楽しみにしてます(*^^*)

それと、私もジェイの大ファンです!

コメントをさせていただこうと思ったのですが、コメント欄が見つけられず…。
コメント受け付けはされていないのでしょうか?もしコメント欄あるよ!ということであれば場所を教えていただけると嬉しいです。

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メイフェ

すいません、コメント再びで・・・。

kuroqieさんもジェイがお好きですか~♪私も大好きです~嬉しい♪
まだジェイも売れ始めたかそれぐらいの頃、その存在を知らなかったのに
お店で流れてきた彼の曲に「何このメロディ!?」ではまりました♪
kuroqieどんな曲がお好きですか~?

ハイボールのほうがカバランっぽいんですね✩今度飲んでみます。
私は烈酒が好きなので(笑)缶のは薄すぎました。

コメントのこと、ありがとうございます♪
出かける予定があったり、ちょっと仕事が忙しそうだな~という時は
いただいたコメントへのお返事がきちんと書けないのでコメントを開けていないのですが
週に2回ぐらいはどこかで開いているので、お時間あればいつでも入れてください♪

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kuroqie

いえいえ。再コメント嬉しいです!

私とジェイの出会いは台湾エンタメに目覚めた2005年に、ちょっと前に台湾に行ったという友人から「台湾ではこの人がいま大人気らしいよ!」と言って「七里香」のアルバムを貸してもらったのが最初です。ジャケ写を見た時、「なんでこの人がそんなに人気なんだろう?」と疑問だったんですが(笑)、聞いてみたら「なんだこれは!」と衝撃を受けてドハマリしました。その時は大学生で、中国語も独学で始めたばっかりだったんですが、大学の専攻をそっちのけで、図書館で辞書を引きながら歌詞がどういう意味なのか調べたり、発音をノートに書いたりしてました。こうして書いてみると、あの頃がすごく懐かしいです(*^^*)
好きな曲は特にこれというのはないんですが、ライブでは絶対に「開不了口」を聞きたいです。

コメントの件、そういう感じだったんですね。
訪問した時にちょうど開いていたら入れさせていただきます!

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