※本記事は、台湾の大学院生活をつづった旧ブログに2013年3月21日付で掲載した投稿を一部加筆修正したものです。
目次
今日は「台湾流行文化」についての講演を聞いて来ました。
私は「台湾の大衆文化について理解を深めたい」との思いから、台湾の大学院への留学を決意したのですが、実際に授業を受けてみると、「大衆文化研究」と題した授業であっても、台湾の大衆文化について深く探ることはなく、どうしても日本文化や韓流にフォーカスされてしまい、なかなか授業の中では台湾大衆文化について議論する機会がありませんでした。
そして、今日は台湾流行文化を研究されている先生が私が在籍する大学に来て講演をされるということで、とても楽しみにしていました。
講演を聞いて感じたのは、「台湾文化は、私が思っている以上に海外の文化の影響を受けている」ということです。
夜市でおなじみの「鶏排」(ジーパイ、台湾風フライドチキン)が実はケンタッキーフライドチキン(KFC)の影響を受けてできたものだったり、「珍珠奶茶」(タピオカミルクティー)や「牛肉麵」、果物などが沢山乗った「剉冰」(かき氷)なども、海外から台湾に持ち込まれる際に台湾風にアレンジして生まれたものであることを知りました。
そして、「台湾風にアレンジ」の特徴は、「とりあえず何か現地の食材を加える」ということにも気が付きました。
街中では「日式◯◯」と掲げられた飲食店をよく見かけます。実際に店に入って食事をしてみると、味付けがやはり台湾風にアレンジされていて、「これはちょっと…」と思うこともあります。ですが、上記の例から考えてみると、実はこのような工夫が新たな台湾フードを生み出すきっかけを作っているのかもしれないと感じました。
また、今回の講演は「台湾流行文化」という演題だったのですが、先生が説明する際には、やはり日本の例が多く紹介されました。アニメからドラマ、野球、たまたドラッグストアのことまで。
私は日本生まれ、日本育ちの日本人なので、日本の文化についてはよく知っているはずなのに、それが台湾の文化に吸収されるときに、その存在を意識することができていないんだなということを今日の講演を聞いて感じました。
台湾にいるからこそ、日本の文化に対する感度を高くする。それが、台湾文化をよりよく理解することに繋がるのかもしれないと思いました。
そして、今日一番印象に残ったのが、台湾華語における「可愛」の概念です。
中国語で「可愛」と見ると、どうしても日本語の「可愛い」と同じ意味だと思ってしまいますが、実は台湾で使われる「可愛」は日本語の「可愛い」より使われる範囲が広いようです。
例えば、こんな例文でも「可愛」の単語が使われます。
「2月なのにまだクリスマスツリーが飾ってあるよ。台灣很可愛。」
2月のクリスマスツリーは季節外れであり、ここで言う「台灣很可愛(台湾は可愛いね)」にはやや皮肉っぽい意味合いが込められています。つまり、「可愛」は皮肉めいた感情を表す際にも使われることがあるのです。でも、皮肉であっても「可愛」を使うことで、批判性が弱まるような感覚があります。日本語の「可愛い」は単純に「可愛い」という意味で使われ、皮肉る際には使わない気がします。
確実に言えるのは、「台灣很可愛」という中国語のフレーズは聞きますが、「日本って可愛いね」という日本語のフレーズは聞いたことがありません。少なくとも私は。
台湾で使われる中国語の「可愛」のほうが、日本語の「可愛い」より柔軟性があるのかなと思います。
とても便利な言葉、「可愛」。
今まであまり「可愛い」について注目したことはなかったのですが、考えてみると意外と奥が深いです。今度、四方田犬彦氏の『「かわいい」論』でも読んでみようかなと思います。
ちなみに、私は中国大陸の中国語には精通していないので、中国でも台湾と同じように「可愛」が使われることがあるのかはわかりません。ご存じの方は教えていただけると嬉しいです。
日本語のかわいいも結構皮肉で使われていると思います。
「プレゼント、かわいいサイズね(ケチだ)」、またあまり特徴がなくなんとも思っていない女性についてどう思っているか聞かれた時の感想「まあかわいいよね」これも,特に女性が言う場合には皮肉であります。
なるほど!!確かに、そういう用例をきいて見ると、日本語でもあるかもしれませんね。
興味深いです。