※本記事には台湾ドラマ『時をかける愛』に関してネタバレの内容が含まれています。内容を知りたくない方は、ドラマを見終わった後にご覧ください。
台湾の「偶像劇」と呼ばれる都会的なおしゃれなイメージを打ち出した台湾ドラマには決まって、主人公が住むおしゃれな部屋が登場する。
だが、これを見て、「台湾のお部屋素敵!」などとはくれぐれも思ってはいけない。
現実とかけ離れすぎているからだ。
最近、遅ればせながら去年話題になった台湾ドラマ「時をかける愛」(想見你)を見ている。この中で、アリス・クー(柯佳嬿)演じるヒロイン、黄雨萱は1LDKとみられる広い部屋に一人で住んでいる。寝室の採光は良好で、二口ガスコンロと換気扇が付いたキッチンもある。
黄雨萱のお部屋は下記動画にちらっと出てきます。
劇中に出てくる風景を見ると、信義区の威秀なども出てくるから、ヒロインが住んでいるのは台北、もしくは新北という可能性が高い。
台北で今現在このような物件を探すと、月額3万元(1元=約3.6円/2020年7月現在)はいくと思われる。
補足しておくと、台北の単身用賃貸物件で二口コンロ&換気扇付の物件は希少だ。実際に賃貸サイト「591」で軽く調べたところ、獨立套房(個別の玄関がある浴室付きの部屋)の場合、1万元台の物件だと無いのが当たり前で、2〜3万元台でようやく少しだけ見つかる程度だ。2〜3万元の物件でも、キッチンはIHコンロが一口だけ、換気扇なし、というのが大半だということも分かった。
私は現在、ルームシェアで台北中心部エリアのアパートの3LDKの部屋の1部屋(室内にバスタブ、トイレあり、キッチン、洗濯機は共有)を借りて、1万〜1万5000元の間の家賃を払っているのだが、同年代(20〜30代)の台湾人と家賃の話になると「高いね!」とよく言われる。
この感覚でいくと、3万元の物件は「めちゃめちゃ高い」のだ。
じゃあ、ヒロインの収入はどのくらいなのか。ヒロインが働くのは、おそらくIT企業。IT企業は給料が高めなイメージでかつ、ヒロインの役職は組長(「組」は企業の中で一番小さな単位。組長は日本でいうチーム長クラスだと思っていい)だから、平均的な27歳よりもいい給料をもらっていると推測される。会社のオフィスがスタイリッシュで、規模としてはそんなに大きくないように見えるため、比較的若い会社なのだろうと思う。
同僚の話によると、そういう会社は能力があれば気前よく高い給料を与えるということなので、もしかしたら月給は9万元くらいあってもおかしくないという。
だが、物語が少し進むと、実はその部屋には学生時代から住んでいるということが発覚する。
学生であの部屋に住めるということは、間違いなくご家庭がお金持ちだ。今のところ、ヒロインの家庭の話は出てこないが、そこの部分の描写があるのかにも注目して見たい。
上記は冒頭の数話を見た時点で書いたのだが、終盤まで進むと、あの部屋についての背景描写があった。黄雨萱が学生時代に1万4000元の予算で部屋を探していたところ、気に入る部屋が見つからず、彼氏の王銓勝(グレッグ・ハン)の提案によって、二人で1万4000元ずつ出し合ってもっといい部屋を借りようということになり見つけたお部屋だということが判明した。そのため、家賃は2万8000元程度という設定だと分かった。
さらに調べてみると、こんな記事を発見した。
在這裡!租屋網驚見《想見你》愛的小窩 租金每月2萬8000元(2020年2月15日付蘋果日報)
日本語仮訳:ここ!賃貸サイトになんと『時をかける愛』愛の巣 家賃は毎月2万8000元
この部屋は実在する部屋で、家賃はぴったり2万8000元で賃貸に出されていたという。
台湾のドラマはセットでの撮影が少ないと聞くが、まさかこの部屋も実在するものだったとは驚きだ。
上記の記事の本文や画像の賃貸情報をよく読むと、この部屋は台北市大安区のアパートの頂樓加蓋の部屋だということも分かった。
頂樓加蓋とは、アパートの屋上スペースに建て増しした部屋を指す。本当は違法らしいのだが、こういった部屋は多く賃貸市場に出回っている。そして、頂樓加蓋の部屋は夏に暑かったり、階段の上り降りが大変だったりとデメリットがあるため、家賃が比較的抑えてあるのが特徴だ。
私も最初にこの中国語記事を見たとき、2万8000元でこの部屋に住めるならちょっといいなと思った。だが、頂樓加蓋と知って、リーズナブルな価格設定に納得した。
でもやっぱり、学生時代に一人1万4000元の家賃が払えるのはだいぶ裕福だと思う。
私も実は大学院時代に台北の山腹あたりの地域で在学2年目から1万4000元の部屋を借りていたのだが、私の場合は台湾留学をする前に日本の会社で働いていて、留学資金を貯めていたのと、台湾奨学金の足しがあったこと、そして1年目は大学の寮に入っていたため、資金に余裕があったから、なんとか借りられたという感じだった。当時は卒業後に日本に帰る予定だったため、限られた期間なら少し高くてもいいやと考えていたというのも一つの理由だ。
ちなみに、最後まで見てみても、黄雨萱の家族に関する情報は一切出てこなかった。
上記でも触れたが、台北では1万元台の部屋でまともに料理ができるキッチンが付いている部屋はほとんどない。もし、二口コンロのキッチンがほしいなら、家庭向けの部屋を借りてルームシェアをするか、予算を上げて2万元以上出す必要がある。
591で2万~3万元の部屋を検索すると、1万台の部屋に比べて明らかに広さ、綺麗さがランクアップしている。さらには、住民向けのフィットネスルームやロビーなどがマンションに備わっている部屋もある。
ただ、実際に部屋探しをする庶民の側からすると、別にそんなに広さはいらないし、豪華じゃなくてもいいから、ちゃんとしたキッチンを付けておくれと心から思う。
そもそも台湾は外食文化が盛んで、友人によれば子供がいても3食外食で済ませる人もいるらしいから、みんなそこまでキッチンにこだわっていないという事情ももちろん分かってはいる。けれど実際問題、学生時代に同級生と健康診断の話をしたときに、20代前半で痩せているのにコレステロール値が異常に高い人が複数人いたから、私は毎食外食で済ますのは健康のために避けたい。
そんなに広くなくていいし、エレベーター無しのアパートで、駅から徒歩10分くらいでもいいから、誰か日本好きの大家さんが日本的な小型キッチン、バスタブ付きのワンルームを作って、1万5000元くらいで貸してくれないかな。
※アイキャッチ画像はPixabayからPhilippsaalさんの画像をお借りしています。
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