男の子が好きな女の子に朝ごはんを買って持っていく―。
台湾の若者の間ではよく見られる光景です。
私もかつてはそんな日があったなぁ(遠い目)というのは置いておいて(笑)、そんな「朝ごはん」が物語のキーとなる作品が、2022年1月に公開された青春映画「我吃了那男孩一整年的早餐」です。日本語にすると「あの男の子の朝食を丸一年食べた」。
家庭に悩みを抱える17歳の女子高生・ウェイシン(項微心)にとって、ストレス発散の一番の方法が「食べること」。ある日を境に、学校のマドンナで親友のチーラン(方琦然)のもとに朝食が毎朝誰かから届けられるようになり、食いしん坊のウェイシンがその朝食を代わりにもらって食べるという日々が始まります。ウェイシンはその一方、ひょんなことで先輩のヨウチュエン(陶宥全)と親しくなり、恋に落ちますが、朝食を食べ続けて1学期が過ぎる頃、チーランに朝食を届けていたのは先輩だと知ってーという甘酸っぱい物語です。
台湾らしさ満載の物語ですが、それもそのはず。台湾の大学生向け掲示板「Dcard」に投稿された実話が基になっています。
先輩を演じたのはシンガーソングライターのエリック・チョウ(周興哲)。映画初出演、初主演です。ウェイシンは、最近ドラマや映画に引っ張りだこの若手俳優、ムーン・リー(李沐)が演じました。
高校生の淡い恋愛を描く台湾青春映画の王道のような作品で、ちょっと笑えつつも、二人の会話がなんだか切なくて、自然と涙が出てきます。
物語の中にぐいぐい引き込まれたのは、李沐の自然体の演技のなせる技なのかもしれません。彼女はすごく美人とかすごく可愛いとかいうタイプの俳優さんではないと思うのですが、表情がとても豊か。今回演じたウェイシンは気持ちが顔に出やすいキャラクターで、楽しそうに笑ったり、ちょっと気まずそうな顔をしたり、落ち込んだ様子を見せたりと、表情がコロコロ変わって、ついつい見ているこちらも感情移入して彼女を応援してしまいたくなってしまう―。そんな魅力がありました。今作では素敵な歌声も披露しています。
登場する朝ごはんがコーヒーとサンドイッチといった洋式のものではなく、中華式のメニューだったのも味わい深さを増していたように思います。主に登場していたのは台湾式おにぎり(飯糰)とミルクティー(奶茶)。ウェイシンのアルバイト先も昔ながらの庶民的な朝食店です。(このバイト先も実は物語の重要な部分に関わってきます)
台湾の青春恋愛映画が好きな人なら気に入ること間違いなし。日本で上映、もしくは配信されたらぜひ見ていただきたい作品です。
ちなみに同作は今年の金馬奨で新人賞(エリック・チョウ)、脚色賞、オリジナル歌曲賞の3部門にノミネートされています。受賞結果が楽しみですね。脚色賞は2作品しかノミネートされていないので、期待大です!
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