先日、台湾の新人映画監督の登竜門とも言われる「金穂奨」(ゴールデン・ハーベスト・アワード)の映画祭「金穂影展」に行ってきました。
金穂奨は文化部(文化省)主催のアワードで、中華圏の映画界で権威を持つ「金馬奨」と同様、台北金馬執行委員会が運営しています。今年で44回目となる歴史ある映画賞です。
対象は長さが60分以下の短編。台北映画賞や金馬奨など台湾の主要な映像関係の賞での受賞作品が2作品未満の国民もしくは台湾居住の外国人が監督を務めた作品であることが応募の条件になっています。
台北映画祭や金馬映画祭にはほぼ毎年参加している私ですが、金穂映画祭で作品を見るのは実は今回が初めて。(例年、「気付いたら終わってた…」ということが多く。)
見てきたのは、「學生劇情片」(学生劇映画)部門の「男解之題」という枠で上映された4本です。
この枠は男子小学生や男子高校生を主人公にした作品が集められました。
作品の上映のテーマと劇中写真に興味をそそられてチケットを購入したのですが(余談ですが、金穂映画祭のチケットはめちゃくちゃ安い。なんと1枚50元!!日本円だと200円ちょっと)、どれも予想を上回る質の高さでした。
まず、制作陣がすごい。
『秘密的午後』はエグゼクティブプロデューサーが『藍色夏恋』のイー・ツーイェン(易智言)、『腸躁男孩』は公共テレビの学生映画企画案に選ばれて制作された作品なので、ドラマ『悪との距離』(我們與惡的距離)を手掛けたユー・ペイホア(於蓓華)がエグゼクティブプロデューサーを務めています。
学生映画なのに豪華だなぁと思っていたのですが、ふと思い出しました。
私は大学院時代、映像関係の学科に在籍していたのですが、台湾映画界で超有名なベテラン技術者が脚本制作について教えてくれる授業を受講していたことがありました(私は脚本家になりたかったわけではないけど、ミーハー根性で受講。学生10数人の少人数の授業かつ、脚本は中国語で書かないといけなかったので、めちゃくちゃしんどかったし、私には脚本の才能はないなと確信しました笑)。このほかにも、学内で映画監督や出演者を招いた上映会がちょくちょくあったりなんかもして、そういえば台湾の映画業界って、著名人が若手を育成しようとするムードが強いよねと感じていたのでした。そこが台湾映画の強さなのかなと思います。
『秘密的午後』に関しては、出演者も豪華で、なんとレオン・ダイ(戴立忍)が父親役。この作品は、シングルファーザー家庭の年の離れた兄弟を中心に、お兄ちゃんっ子の弟がある日、高校生の兄が教室で男子生徒とキスするところを見てしまうーという話です。兄役を演じたのはBLドラマ『HIStory3 那一天~あの日』で注目を集めたホアン・ジュンジー(黄雋智)。
私は「HIStory」シリーズは未見なので、ジュンジーくんのことはこの作品で初めて見て、「チャン・シャオチュアン(張孝全)の若かりし頃みたいな可愛い子だな」と思っていたのですが、上映後のあいさつで彼が登場した時、彼のファンらしき子たちが一眼レフカメラでカシャカシャ連射する音が劇場内に響き渡り、「あ〜、すでにファンがいる俳優さんなんだ」と知ったのでした。
この他にも上映作品で興味深かったのは、実験性とローカル性の高さです。
『腸躁男孩』と『好學生阿強』は両作品とも、市場で商売を営む家庭の子供のお話です。そのため、両方とも市場の風景が登場します。上映後のあいさつに登場した『腸躁〜』の監督やプロデューサーによると、撮影に当たっては市場の人たちとの関係構築のため、市場に入り浸っていたそう。こういう地域密着型のところも、台湾の学生映画の見どころだと感じました。
『門之後』は、お絵かきが好きな内向的な男子小学生の現実と空想の世界が混じり合ったお話。作品中にはたくさんの絵と、絵を使った演出が登場し、独特な雰囲気が醸し出されていました。上映後のあいさつで、楊芸喬監督は大学では美術を専攻していたと聞き、そのセンスに納得したのでした。
金穂映画祭はこの1枠しか見ていないのですが、来年はもっといろいろ見てみたいなと思いました。
金穂奨の今年の受賞作品はオンラインで6月30日まで見られるので(1本50元、海外からも視聴可)、気になる作品がある方はこの機会にぜひ〜。
視聴ページはこちら。私が紹介した4作品のうち、『腸躁男孩』と『好學生阿強』はオンラインで鑑賞できます。
参考
第44回金穂奨公式サイト:https://ghsa.org.tw/gha/
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