こんにちは。台湾在住、台湾企業勤務のkuroqie(@NicihijoTW)です。
私は現地採用組なのですが、少し前にふと「台湾」「駐在」でグーグル検索をしてみた際、最上位表示されていた記事が、このワードで検索するであろう台湾駐在予定の人や駐在生活について興味がある人にとって、必ずしも有用ではないことに気が付きました。
上位表示された記事についてTwitterで話題に出したところ、台湾音楽ライターの中村めぐみさん(@Tapitea_rec)が「『台湾 駐在』でGoogle検索1位になるプラン」を考えてくださったため、これに乗っかる形で記事を作ることにしました。
ただ、私は駐在員ではないので、現役駐在員にインタビューを実施。この内容を基に記事を作成しました。取材対象者の人選は、applemint 代表の佐藤峻さん(@slamdunk772)にご協力いただきました。ありがとうございます。
この記事では、「これから台湾に赴任・帯同する人」「台湾駐在生活に興味がある人」に向けて、現役駐在員の生の声を基に、台湾駐在員のリアルな生活を紹介します。
※かなりの長文となっているため、時間がない方は下記の目次から興味のある項目に飛んでください。
目次
本題に入る前に、まずは日本企業の台湾進出状況についてご紹介します。
外務省の統計によれば、台湾に進出する日系企業は1,179拠点(前年比+2.3%)。都市別では台北が614拠点と最も多く、次いで高雄(168拠点)、桃園(89拠点)、台南(74拠点)、台中(52拠点)となっています。ちなみに台北は日系企業の拠点数で世界12位となっており、世界的に見ても多くの日系企業が進出していることが分かります。(外務省「海外在留邦人数調査統計」令和元年(2019)版、平成30年10月1日現在)
また、台湾に進出する日系企業491社を調査したJETROの統計によれば、規模別で大企業が197社、中小企業 51社(※中小企業の定義は、日本の中小企業基本法の定めに基づく)となっています。企業別の台湾駐在員数(回答数240社)は「1~2人」が129社と最多。次いで「3~5人」59社、「6~10人」29社などとなっています。(JETRO「2019年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」)
駐在年数に関する公式な資料は見つからなかったのですが、私の知人ベースでは「3年」が一つの目安になっているように感じます。もちろん企業によって状況は異なるため、それより短い人、長い人もいます。
この記事では、台湾に進出する日系企業拠点数の5割以上が台北となっていることと、私自身が台北在住であることから、台北で働く現役駐在員に話を聞かせてもらいました。そのため、下記の例は「台北」を例としており、他の地域では事情が異なる場合があります。
2013年訪台、2017年ごろから現職
妻、子供2人(小4女、小1男)の4人家族
台北郊外・淡水(新北市)在住
赴任前の語学力:
中国語は大学の第二外国語でかじった程度
赴任前の台湾への関心:
社員旅行で1度だけ訪台。台湾に関する知識はほぼゼロ。
駐在員が住むエリアとして筆頭に挙げられるのは、台北市北部の天母(ティエンムー)です。「台北日本人学校」や「台北美國學校」(アメリカンスクール)もこの地域にあるため、外国人が暮らす閑静な高級住宅地として知られています。
また、日系不動産会社「エイブル台湾」の公式サイトを見てみると、台北市街地の中山区の物件も多数紹介されており、このエリアも駐在員におすすめであることが伺えます。中山区内のMRT中山駅一帯はデパートやおしゃれなショップなどが立ち並び、買い物に便利であるほか、松江南京~行天宮エリアはビジネス街となっており、このエリアにオフィスを構える日本企業は少なくありません。中山区は利便性が高いのが魅力です。
どうやって物件を探す?
駐在員の家探しは、基本的に以下のいずれかになると思います。
- 会社に支援してもらう(会社の所有・契約物件に住む、または不動産屋や候補物件を紹介してもらう)※2020年11月28日修正
- 日系不動産屋(中国語ができる場合は台湾現地の不動産屋も)に相談する
- 知り合いから紹介してもらう
「1.」は説明不要だと思うので省略します。
自分で物件を探す必要がある場合は、「2.」のケースが大半だと思います。中国語が得意でない人は、日系不動屋に頼るのが安心ではないでしょうか。
台湾には複数の日系不動産会社が進出しているほか、日本語対応の不動産サイトなどもあります。
日系大手不動産会社が紹介する物件は高級物件が中心(ざっと見た限りだと中山区の場合、ボリュームゾーンは4万~6万台湾元)ですが、台湾賃貸ドットコムは2万元台(同じく中山区の場合)の物件もちらほら見つかり、比較的お手頃の物件も扱っている印象を受けました。
エイブル台湾はYouTubeで物件を紹介しています。素敵な高級物件が紹介されていて、見ているだけでも楽しいです。
中国語がある程度できる方は、賃貸サイト「591」で探すのがおすすめです。
台湾で物件探しといえばまずはこれといった存在で、私も引っ越しのたびに利用しています。掲載物件は安いものから高いものまで幅広く、エリアや予算で絞って検索することができます。
ただ、基本的には中国語でのやり取りが必要です。仲介業者がいる場合もありますが、大家さんと直接取り引きする場合が多く、中国語力が求められます。中国語が不安な人や、サポートしてくれる友人・知人がいない人にはあまりおすすめしません。
岩村さんの場合
岩村さんはどのようにして物件を探しましたか?
自分で選びました。友人(日本語がペラペラな台湾人と台湾人と結婚した日本人妻)に手伝ってもらい、地元(台湾)の不動産会社で探しました。日系の不動産会社は「高いな」と思って。しかも都内ばっかりなので。台北郊外の淡水を選んだのは妻の希望で、「安心して暮らせる」「環境が良い」という条件でこのエリアにしました。
淡水は湿気が多いので、物件は風通しの良さを重視しました。現在住んでいるのは、淡水駅から徒歩10分くらいの場所にある、マンション6棟が立ち並ぶコミュニティーの22階の部屋です。家賃は3万5000元いかないくらいです。
間取りを教えて下さい
リビングとキッチンのほかに、個室が4部屋あります。トイレが2つ、浴室が2つ(シャワーのみとシャワー+バスタブ)です。広さは全部で45~50坪ほどあります。
マンションの共有スペースにはジムや映画上映スペース、子供用スペースのほか、卓球台やバスケットコート、麻雀ルーム、カラオケルーム、プールなどもあってすごく充実しています。妻と子どもたちはけっこう使っているみたいです。
現在の住居で困ったことはありますか
エアコンに暖房機能がないことです。ついているのもあるんですが、ほとんどは冷房機能だけです。淡水は冬が寒いので、ヒーターを導入して使っています。
台北は公共交通機関がとても発達しており、メトロ(MRT)やバス、自転車シェアリング「YouBike」を使えば、ほとんどのところに行けます。
タクシーも比較的安く利用できます。一般のタクシー(車体が黄色)のほか、「Uber」のサービスもあります。
一般的なタクシーは初乗り70元(1.25キロまで)、その後は200メートルごとに5元が加算されます(日中の場合、2020年11月現在)。参考:台北市交通運輸局 ※タクシー料金は県市によって異なります。
ちなみに、台北駅からランドマークの「台北101」までの推計料金は255 元(約6.2キロ)です。(大都會計程車の公式サイトで試算)
通勤で使うのは基本的にはMRTとバスです。家の前にYoubikeのスポットがあるので、駅までYoubikeを使うこともあります。タクシーに乗るのは、会食で帰宅が遅くなった時くらいです。
岩村さんおすすめの交通アプリ
「台北公車通」
バスの到着予定時刻をリアルタイムで確認できるアプリ
台湾は外食が盛んであるため、飲食店がとても多いです。1日3食を外食で済ませる人も少なくありません。
ビジネス街の松江南京エリアの場合、昼のお弁当はだいたい100元前後で買うことができます。
朝:食べない
昼:会社付近の飲食店(ローカルフード)やデパートのフードコート
夜:家で妻の手料理、会食は多い時で週2回ほど。場所は主に林森北路の飲食店
MRT中山駅近くの飲み屋街。日本風の居酒屋や夜のお店などが立ち並び、日本人駐在員御用達のエリアとして知られる。
林森北路は飲み屋の種類が多いのが魅力。昔ながらのジャズバーなど、味があるお店もあります。キャバクラは最初は面白くて行くこともありましたが、その後ぱっと熱が冷めて今は全然行かないですね。
焼き鳥屋「火焼鳥日式居酒屋」
台北市中山區中山北路一段121巷4-1號
(画像:岩村さん提供)
日本の食材を買うには
「新光三越」や「SOGO」、「微風広場」などのデパ地下にあるスーパーは日本の食材が豊富に揃っており、だいたいの日本食材は買えます。ただやはり、日本で買うよりも高く、物によっては日本の2~3倍ほどする場合もあります。
妻は普段の買い出しは地元の市場やスーパーでしています。デパ地下で買うのは「麦茶」や「味噌」などです。
一家で台湾に赴任する場合、子育てなども気になる問題なのではないでしょうか。この辺についても聞いてみました。
夫人の中国語力(赴任前)
妻は中国語が全くしゃべれない状態で来ました。最初は台湾師範大学の言語センターに3カ月通い、その後は台湾人と言語交換をするなどして勉強していました。
子育て
お子さんはどんな学校に通っているんですか?
子供は現地の学校に通っています。台湾は公立の幼稚園に入れるのがすごく大変なので、幼稚園は私立に入れて、小学校は公立にしました。
日本人学校に入れることは考えなかったのですか?
そもそも天母の学校(=日本人学校)に入れるつもりは全然ありませんでした。「もったいなくない?」という考えで、いずれは日本に帰ると思うのですが、現地の学校に通うなんてなかなかできない経験ですし、絶対に中国語をしゃべれるようになると思うので。しゃべれないよりはしゃべれたほうがいいですよね。
妻は最初は心配していましたけどね。子供が2歳くらいの時に初めて現地の幼稚園に入れた時は半年くらいはしゃべれなくて。幼稚園の先生からも前例から「半年くらいはしゃべれない」と聞いていたのですが、3カ月くらいでヒアリングは出来てるっぽくて、半年くらいしたら中国語をしゃべりだしました。
子育てで大変だったことや悩んだことはどういったことですか?
台湾の学校では規律とかはあまり教えてくれないので、その点について妻は危惧してましたね。「ごちそうさまです」や「ありがとう」などは日本のほうが教育してくれますね。なので、妻と子供で1カ月くらい日本に帰る時は、子供を日本の学校に1週間くらい入れて団体行動などについて学ばせています。
言語面では、娘が小学校に入った時、会話はできるのですが、学習の言葉がわからないので、日本人学校に入れるか妻は少しだけ悩んでいました。現地の学校に入って、本当に大変だったら日本人学校に入れるとい選択肢もあったのですが、でも子供が成長した時に「中国語がしゃべれるのは絶対にいいこと」と考えていて、言語で困ることとか、テストで点数が低いとかはあるかもしれませんが、「そんなのどうでもいい」と思っていました。
長女の入学時には知人に手伝ってもらうこともありましたが、今は妻も中国語ができるようになって、学校の先生とのコミュニュケーションもできるようになったので、自分たちでやっています。
日本語の塾に2週間に1回通わせています。あとはベネッセの「進研ゼミ」をやっています。
そこまで大変だった記憶はないですが、長男を台湾で出産した時は大変でしたね。産婦人科で、日本語ができる看護師さんがついてくれていたのですが、不安はありましたね。その時は中国語もあまりできなかったので、看護師さんがいないと、先生が言っていることも「大丈夫って言ってるよね」くらいしかわからなくて。子供が病院に行く時なども大変でしたね。
言語面での不安はありましたが台湾の医療水準に関しては安心していて、妻は「日本に帰るほうが面倒くさい」と言っていたので、台湾での出産を選びました。
岩村さんおすすめの生活お役立ちツール
通訳機「POCKETTALK(ポケトーク)」
最初は(通訳に)Googleのアプリとかを使っていました。でも後からポケトークになりましたね。すごく性能がいいので。
台湾で日本人は外国人として暮らすことになります。また、文化、習慣なども異なるため、不満を一つも抱えずに台湾で生活している外国人はいないのではあいかと思います。岩村さんは「不満はあまりない」と語っていましたが、台湾生活での不満や物足りないことを思いつく限りで教えてもらいました。
岩村さんの場合
日本のほうがモノに溢れていると思います。私は車に乗るのが好きなのですが、車にしても、バイクにしても、台湾は選択肢が少ないです。
子供と一緒にぱっと遊びに行ける場所が少ないと感じています。
妻は永住権を持っていないので、正規での就労はできません。
ちゃんと税金を納めているのに、もらえないのは「おかしいよね」と飲む人飲む人に言ってました。あれはけっこうみんな「おかしいよね」と言っていました。
台湾政府が新型コロナウイルス感染拡大で落ち込んだ景気の刺激策として2020年7月に発行した振興券。当初は交付対象が「国民」と「国民と結婚している外国人」のみとされ、それ以外の外国人は対象外とされた。11月16日からは永久居留証を持つ外国人も交付対象に含まれるようになった。インタビューは10月に実施。
なんであんなに転ぶくらいブレーキをかけるんだろうと思いますね。すごい急ブレーキをかけますね。止まる前にドアが開いたり、ちゃんとよく見ずにドアを閉めたり。妻は2回くらいドアに挟まれたことがあります。危険です。
歩くのが遅くて、抜きたくても並んで歩いているので道が塞がれてしまうことがあります。歩いてて途中でいきなり止まるから、「危ないでしょ」と思いますね。
最後に、これから台湾へ赴任する人へのアドバイスをもらいました。
台湾は治安もいいですし、いい人も多いので、赴任する人にとっては住み心地のいい国だと思います。外国人として、台湾では「働かせてもらっている」という立場なので、台湾の歴史くらいは知っておいたほうがいいと思います。何も知らないのは失礼だと思うので。
ただ、国民性などについて知識があるから台湾の人と上手くいくかといえばそれは別で、接し方においては日本人と同じだと思います。しっかり接すれば心を開いてくれますが、言葉尻などは、気をつけないと勘違いされる場合があるので注意が必要です。
逆に、「台湾人はメンツが大事。だから人前では注意しちゃいけない」とよく言われますが、実際には台湾人のメンバーが部下を人前で注意していることもあるので、本当に大切なのは関係性だと感じています。「枠でくくらないほうがいい、先入観で見ちゃだめ」だと常に思っています。ただ、台湾人の自己主張の強さにはショックを受けましたね(笑)
ごはんに行ったり、遊びに行ったりしますね。先日はバーベキューをしました。「日本研修」と称して、スタッフ数人を日本に連れていき、温泉に行ったりしましたね。
『台湾人には、ご用心!』
酒井亨 著
以上、現役駐在員の生の声をお届けしました。これから台湾に赴任される方に少しでも役立てていだければうれしいです。
子育てや仕事でのコミュニケーションなどは、身近に同じような境遇の人がいないと聞けない話なので、私自身もすごく勉強になりました。
そして、ざっくばらんに質問にお答えいただいた岩村さん、本当にありがとうございました。
取材・文:kuroqie
監修:中村めぐみ
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