私が台湾に居続けられる理由 純粋な優しさに支えられてここにいる 

 私が台湾に暮らしはじめて、もうすぐ9年になります。実は、大学院留学を終えて一度日本に完全帰国したことがあったのですが、縁あってその約3ヵ月後に戻ってきました。

 この9年間、嫌なことはたくさんありました。会社で「外国人」という理由だけで待遇に差をつけられたり、記事でも書きましたが「外国人配偶者じゃないから」というだけで振興券の対象にされなかったり、行ったお店で見下されたり。挙げればきりがありません。

 私は台湾に家族がいるわけでも、恋人がいるわけでもなく、単純に「仕事」という理由でここにいます。駐在ではなく、現地採用なので、「日本に帰ろう」と決めたらいつでも帰れる身分です。

 でも振り返ってみると、不思議と「台湾から離れたい」「日本に帰りたい」と思ったことは一度もありません。本当に。

 なんで台湾生活が嫌にならないのか。それは

「周りの人の優しさがあるから」

ということが一番大きいと感じています。

 会社で嫌な思いをしたことがあっても、忙しいにもかかわらず大先輩が電話で長時間愚痴を聞いてくれたこともあったし、そんなに接点がない他部署の方々にも何かと話しかけてもらえたり、ささいなことでほめられたりします。

 大学院時代もそう。同じ学部で非中国語圏出身者は私だけで、中国語レベルは全然ついていけなかったのですが、同級生も先生も、だからといって私をお荷物扱いせず、でもさりげなく気配りはしてくれて、だからこそ無事に修士号を取得できたと思っています。振り返ると、みんなの優しさがなければ、絶対に卒業できていません。

 お店では、先日ちらっとTwitterで愚痴を書いたのですが、中国語をバカにされたりして嫌な思いをすることもありますが、それはレアケースで、基本的には、日本人だと気付かれると「中国語ができてすごいね」「台湾で働いてるなんてえらいね」と笑顔でほめてくれます。その笑顔からは、お世辞ではなく、純粋な感情ということが分かります。

 毎日顔を合わせるルームメイトも、私の中国語がちょっと変でも嫌な顔一つせず、意思をくみ取ってくれます。ルームメイトの友人も、ご家族も、笑顔で接してくれて、これまたささいなことでほめてくれます。

良くも悪くも「外国人だから」

 書きながら気付いたのですが、台湾ではそんなに関係が近くない人や見知らぬ人からほめられることがやたらと多いです。それは私が「台湾にいる日本人だから」という点が大きいように思います。

 「外国人だから」ほめられて優しくされるし、「外国人だから」排除されてバカにされる。

 表裏一体です。

 でも、台湾生活で占める割合のうち、前者の「外国人だから優しくされる」という割合のほうが圧倒的に大きいです。私個人はそう感じています。だからこそ、辛い思いも耐えることができます。

最近の感動エピソード

 なんでこんな記事を書いたかというと、「台湾の人の純粋な優しさ」を感じる出来事があったからです。最後にこのエピソードを紹介して記事を終えたいと思います。

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 台北の原住民工芸品店に行った時のこと。

 台湾では現在、政府主導のモバイル決済サービス「台湾Pay」の普及と、台湾原住民(先住民)の経済支援を目的に、原住民関連の特約店で台湾Payを使って支払いを済ませると、購入金額の半額がキャッシュバックされるというキャンペーンが実施されています。

参考 挺原民•享優惠台湾Pay

 私は事前にこの情報を知っていたので、来店前にスマホで台湾Payの設定をしていたのですが、いざ支払いをしようとしたところ、なぜかエラーが出てくるというトラブルが発生。しばらく格闘したところ、当該店舗で受け付けているのは台湾Payが「デビットカード」と紐付けされている場合のみだと分かりました。私はクレジットカードで紐付けしていたので、弾かれたようでした。

 仕方がないので、半額キャッシュバックが使えないのは惜しいけれど、諦めてクレジットカード払いにしようとしたその時。店内にいた女性が「私が台湾Payで支払ってあげるから、半額分を現金でくれればいいですよ」とさらっと申し出てくれたのです。

 この女性は、オーナーらしき女性と親しげに話していたので、店の関係者なのか、それとも常連さんなのかは不明ですが、見ず知らずの私に、全く躊躇せずにこのような申し出をしてくれたことにとても感動しました。

 もし私だったら、いろいろ考えてしまって、サラリとそんな行動に移すことは絶対にできません。

純粋な優しさに支えられて、ここにいられる

 最近は嫌な出来事もありましたが、その後、久々に行った来店2回目のビアバーの店員さんに覚えてもらっていたり、よく行くコーヒースタンドの寡黙な店員さんに私が日本人だということがばれて「すごいね」とほめられたり、上記のように見返りを求めずに親切にしてもらったりという出来事がわずか1週間ほどの間に重なり、「このような台湾の人の純粋な優しさに支えられて、私は台湾に居続けられているのだ」としみじみと感じました。

 私を受け入れてくれる台湾の人々の優しさに対して感謝を忘れてはいけない。

 改めて肝に銘じました。

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