「アーティスト」レイニー・ヤンの真価を見せつけた20周年記念ライブ

レイニー・ヤン20周年記念ライブ垂れ幕

 「素晴らしい」の一言じゃ言い表せない。

 胸いっぱいで、終演後、家に帰る前にレストランに寄り、この文章を書いている。

 レイニー・ヤン(楊丞琳)が歌手デビュー20周年を記念して台北アリーナで開いたコンサート「楊丞琳LIKE A STAR 世界巡迴演唱會」の最終日、11月8日の公演を見たのだが、私の予想を遥かに上回る素晴らしいステージだった。

 私は「流星花園」の頃からレイニーに注目し始め、ソロデビューアルバム「曖昧」もリリース当時に海外発送で買う程度に昔からのファンなのだが、特に「大ファン」というわけではなく、コンサートを見るのはこれが初めてだ。正直なところ、最近の曲はあまり聞いてもいない。だから、決してコアファンではない。知らない曲もいくつもあった。

 でも、このコンサートは最高に良かった。最高の100倍くらい良かった。

 素晴らしかった点を箇条書きで書き出してみる。

パートごとのストーリー性、流れをぶった切らないトーク

 トークがやたらと多くて長いというのが台湾アーティストの特徴だと私は思っている。レイニーもおしゃべりは十分にしていたけれど、きちんとパートパートの間に挟み込んでいて、流れを切らない形にしていた。

見せたい自分と、観客が見たい自分のバランスが絶妙

 トークで本人が言っていたが、レイニーが目指しているのは「歌って踊れる歌手」。私が知らない最近の曲の感じからしても、「可愛い」よりも「かっこいい」イメージを打ち出したいのは明白だ。

 一方、やはり一般大衆が思うレイニーのイメージは「可愛い」。

 今回のコンサートでは、「かっこいい」レイニーを十分に披露しつつも、初期〜中期の曲を披露するパートでは、ピンクのドレスにロングのゆるふわウェーブという、いかにも「可愛い」のスタイルを打ち出していた。登場した瞬間、思わず「可愛い」と独り言をもらしてしまったほどだ。

 最近のかっこいい曲だけだと、コアファンは満足するかもしれないが、レイニー=「アイドル、可愛い」というイメージを持っているライトファンからすると満足しにくいかもしれない。それを考慮した上で、自分が見せたいイメージだけではなく、ライトファンのニーズを満たすパート・演出もきちんと用意することで、バランスを保っていた。

 しかも、この可愛いパートはアリーナ後方のステージで歌ってくれたものだから、2階、3階の観客も、より近くで見ることができた。

多くの人が知っている曲は、より多くの人の近くで」という観客への思いやりも感じられた。

「ショー」としての見せ方

 セットに派手さはない。中央の回転する箱が演劇の舞台セットのような感じになっていて、一部のパートで異なる風景を見せていたのを除き、基本的には映像と光のみで演出がなされていた。

 このシンプルだけど洗練された感じが、華美すぎずよかった。ステージだけが目立つのではなく、レイニーとダンサーのパフォーマンスを存分に引き立てていた。

 そして、バックダンサーが踊るのはモダンダンス。ポピュラー歌手のコンサートで、バックダンサーがモダンダンスを踊るというのは珍しいのではないだろうか。ダンス自体も見応えがあり、レイニーを見ずに、思わずバックダンサーのダンスを注視してしまう場面もあったほどだった。

 ちなみに、モダンダンスの振り付けを担当したのは、レイニーのかつての同級生だという。

 こんなところだろうか。

 良かった点のほかにもう一つ、特筆しておきたいことがある。

 それは、ところどころで安室奈美恵の面影を感じたことだ。

 私は安室ちゃんの大ファンで、レイニーも安室ちゃんのファンを公言している。

 本人が安室ちゃんを参考にしたのかは分からないが、表情の作り方やファンに送る拍手の仕方など、安室ちゃんを感じさせるところがいくつかあった。もしレイニーが参考にしているとすれば、両方のファンである私からすれば、すごく嬉しい。

 レイニー・ヤンといえば、「アイドル」というイメージを持っている人は多いと思う。私もどちらかといえば、「可愛いレイニー」が好きだ。だが、このコンサートを見て、レイニーはもはや「アイドル」の枠に当てはめて見てはいけないとはっきり感じた。レイニーは完全な「アーティスト」だ。

 レイニーはこの日、「このワールドツアーは今日で休止符が打たれる」といった内容の発言をし、次にどの都市でこのコンサートが開けるか分からない現状に、残念さをにじませていた。

 それもそのはずだ。

 コンサートのエンドロールで、總策劃(総合プロデューサーといったところあろうか)のところには「楊丞琳」1人の名前があった。レイニーがこのコンサートにどれだけのものを費やしてきたのかは、このステージを見ればよく分かる。

 もともと多くの都市で開催する予定だっただろうに、コロナのせいで台湾以外の地域の人に見てもらうことが現時点ではできないのはすごく残念だと私も思う。

 もしコロナが収束し、もし日本公演が開かれることになったら(この内容を日本に完全に持っていくことは難しいかもしれないが)、レイニーを「アイドル」だと思っている人にぜひ見てもらいたい。レイニーに対するイメージをきっと覆すことになるから。

来場者に配布されたレイニーのインタビュー掲載のパンフレットとマスク

関連映像

 最終公演に関する動画ニュースを貼っておきます。前述したピンクの可愛い衣装やモダンダンスなども少しだけ見ることができます。

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