台北映画祭のシークレット作品として突如上映が発表された『鬼才之道』(Dead Talents Society)。
この作品、ジョン・スー(徐漢強)監督とチェン・ボーリン(陳柏霖)がタッグを組むということで、ティザーが出た時から見るのを楽しみにしてました。ジョン・スー監督は『返校』が有名かと思いますが、私は2014年の台北映画祭で見た『小清新大爆炸』でスー監督を知り、ユーモアあふれる作風で好きな監督の一人です。
予備知識ほとんどゼロで見に行ったのですが、期待を上回る面白さでした!とても斬新な物語で、めちゃくちゃ大爆笑!!客席からは何度も大爆笑が巻き起こり、座席が揺れるほどでした(笑)
物語の舞台は、幽霊たちが生きるあの世の社会。彼らの社会には人間を驚かせてこそなんぼという価値観があり、人間をおどろかせる能力があるとみなされた人は「悪霊」としての労働許可証が与えられ、その中で特にめざましい功績がある人はオスカー女優のように称えられます。逆に人間を驚かせるノルマをこなせない人は消滅の危機に直面するという非常にシビアな世界。そんな中で、生存をかけた物語が展開されます。
チェン・ボーリンが演じるのは、かつて一世を風靡した悪霊キャシー(張榕容)のマネージャー。あと30日で消滅してしまうというピンチに直面し、生きながらえるために悪霊を目指す同学(王淨)を自分たちの仲間に入れ、悪霊の労働許可証を取らせるべく手助けをします。
幽霊の世界の話ですが、その社会は人間の世界さながら。弱肉強食だし、管理をする行政の人もいるし、職場での上下関係も、ブラックな労働環境もある。人間の世界の構造を幽霊の世界にそのまま持ってくることで、人間の世界の滑稽さを浮き彫りにしているところがうまい。
そして基本的にはコメディーなのですが、考えさせられるメッセージもあり、ラストは少しウルッときました。
ワン・ジン演じる同学は、最初は自分の死因を「交通事故」と言っていましたが、実は生前、親から言われた「あなたは特別な子」という一言をプレッシャーに感じ、優秀な両親や姉とは対照的に何をやっても上手くいかない自分に「自分はだめな人間だ」という思いをずっと抱いていました。本当の死因は、地震の際、父親が自作してくれた「努力賞」の賞状を守ろうとして、家族の功績が飾られる棚に押しつぶされたことだったのでした。
映画のラストで同学は赤ちゃんに「特別な子にならなくても大丈夫なんだよ」と声を掛けます。この一言に、彼女がこれまで抱えてきた苦悩がギュッと凝縮されているようで、心にぐっときました。
多くの人が「何者かにならないといけない」と感じながら生きているように見える現代。この作品は何者かになりたくて苦しんでいる人に対して「そのままでいいんだよ」と優しく包みこんでくれているように感じました。
そして今作、チェン・ボーリンがとてもハマり役!!
マネージャーのスタイルがめちゃめちゃイケメンな上に、コロコロと変わるかわいい表情も見せてくれています。
そしてそして、なんとなんと90代風のアイドルスタイルも披露!ミュージックビデオも流れるのですが、これがまたとても90年代っぽさがあってめちゃめちゃ笑えるし、普通にボーリンがアイドル的なかっこよさを見せてくれていました。
チェン・ボーリンファンは必見!の作品です。
台湾での公開は8月7日。気楽に楽しく映画を見たい人にとてもおすすめです!
作品情報
公式フェイスブック:鬼才之道
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